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住宅産業のコロナ禍対応 「新しい生活様式」に注力した1年 ~その2~

2021.5.28|業界の知識を深める

  • コロナ禍
  • 新生活様式
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暮らしの改善に期待を背負う

新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う外出自粛の動き(コロナ禍)が始まってから約1年が経過した。この未曽有の出来事は、住宅産業各社の事業に大きな影響を与えた一方、暮らしに直結するという事業の性格上、「新たな生活様式(ニューノーマル)」への対応を迫られた人々から強い期待を寄せられたと言ってよく、またそのためかつてないほどのスピーディーな対応を求められた1年となった。そこで、この記事では改めてこれまでの事業者の取り組みを振り返ってみた。(住生活ジャーナリスト 田中直輝)

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受注回復に手応えを感じる大手住宅企業も

健闘は大手ハウスメーカーの業績からもうかがえる。例えば、積水ハウスが発表した21年1月期連結決算の内容は、売上高が2兆4469億円(前期比1・3%増)、営業利益1865億円(同9・1%減)、受注高2兆4018億円(同3・2%減)などとなっていた。同社が3月5日に開催した経営説明会で、仲井嘉浩社長は「戸建住宅受注は8月以降回復。前年同月比プラスが6カ月継続しており、コロナ禍による悪影響からは既に脱した」などと語り、賃貸住宅「シャーメゾン」、リフォームの受注も回復基調にあるとし、今後の業績向上に前向きな見通しを示していた。

また、住友林業は2月15日発表の20年12月期決算で、戸建注文住宅事業の受注額が前期比11・9%増の2291億円となったことを明らかにしている。その他のハウスメーカーの中にも「受注が回復傾向にある」とする企業がある。以上のように、約1年を経た中で住宅事業者が置かれている状況が曖昧なかたちではなく、明確な数値として判明し始めたのが現状と言えよう。

もっとも、2社の決算だけを見て楽観視ができるものではないし、今年に入って以降、緊急事態宣言を受けて受注実績が前年を下回っている企業もいくつか見られる。コロナ禍が経済に及ぼす影響は長期化するものとも見られ、先行きが不透明な状況は変わらない。


ウェブ活用の代替策 集客落ち込みカバー

注文住宅、分譲住宅に限らず、住宅の営業現場ではこれまで、モデルハウスに代表されるリアルな環境と、そこでの顧客との対面による関係づくりが不可欠だった。ところが、コロナ禍における状況は、それをままならない状況とした。特に、緊急事態宣言下ではモデルハウスは予約制、入場人数の制限などを実施、営業活動は暗中模索の中で進めざるをえなかった。そこで、まず事業者に求められたのが、非接触型の集客と契約の手法の確立。具体的には、インターネットなどを経由したリモート商談システムの構築、ウェブ上での集客イベントなどの手法が取られた。

商品も顧客が自宅で検討ができる、インターネット専用商品への注目度が高まった。その代表例が、大和ハウス工業の「ライフジェニック」シリーズ。コロナ禍前の19年11月に鉄骨系で発売したものだが、自宅という感染リスクの低い環境で、時間に左右されることなく住まいづくりを検討できるため、専用サイトへのアクセス数が今年1月末現在で135万回以上に到達するなど、消費者から高評価を受けているという。そうした状況を受け、4月には木造商品も追加している。


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「ライフジェニック」のウェブページ

インターネット専用商品は従来、低価格帯で、しかもプランが非常に限られていることから実際にはほとんど需要がなかったが、コロナ禍という制限の多い環境の中で、消費者認知度が高まったことは、確実に指摘できることである。

イベントについては、住友林業が行っている「マイホームパーク」などが代表例として挙げられる。これは昨年8月22日から40日間開催していたもので、消費者がウェブサイト上の博覧会場に設けられた各パビリオンを巡り、住まいづくりに役立つコンテンツを閲覧したり、同社による住宅取得の特徴をバーチャル体験できるようにしたものだ。