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多彩なメリット有する木構造 特徴踏まえ有効活用を ~その1~

2021.5.27|業界の知識を深める

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対応力高く軽量、低コスト

木構造のよさはなんといっても構造体から仕上げまでふんだんに木材が使われる点にあります。木材の持つ、さまざまな特性、例えばフィトンチッド(※)による消臭殺菌効果や調湿機能などが、健康で優しい空間を造り出します。増改築についても、木造が潜在的に持っているファジーなシステムが幸いして、細かいニーズにも対応することができます。さらに、木材は流通量が多く、工法もいわゆる「枯れた技術」であるため、鉄骨構造やコンクリート構造に比べ2~4割ほど建築コストを抑えることができます。※フィトンチッド……樹木などが発散する殺菌力を持つ揮発性物質。森林の香りの成分でもある。(建築家 中村義平二)


① 木構造の種類

住宅に用いられる構造躯体方式には大きく分けて「柱梁構造」と「軸組構造」及び「壁式構造」の三つがあります。(図①参照)

これは木造であれコンクリート構造であれ基本的な考え方は同じです。「柱梁構造」は主にコンクリート構造や重量鉄骨構造などに使われます。「軸組構造」の柱と梁(はり)の接合部は離脱はしませんが固定されず、自由に動くと仮定されています。この自由な動きを止めるのが筋交いです。三角形の面を構成することで柱と梁は固定されます。「軸組構造」は木造や鉄骨構造で最も一般的な構造です。「壁構造」は堅固な壁を組み合わせて空間を造る構造です。自動車のモノコックボディーのような考え方で、代表的な構造は2×4工法です。

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図① 各構造方式の概略図


在来軸組工法

いわゆる町場の工務店などが建てる木造住宅が、この工法で造られています。伝統的な日本の木組みをベースにして、長い間の経験則と実績がこの工法を支えてきました。柱と梁で構成される垂直と水平の線が描き出す構成が美しく、京都や高山の民家が持つ美しさは伝統的な日本建築の構造的な魅力でもあるわけです。

しかし、地震や台風といった建物に損壊を与える外力は、水平の力と垂直の力として加えられます。垂直の力だけであれば、伝統的な日本の木構造もかなりの外力に耐えられるのですが、水平の力にはほとんど抵抗力がありません。伝統工法では、柱と柱を繋ぐ「貫(ぬき)」という部材の接合部にくさびを打ち込んで水平力に抵抗していますが、あまり大きな補強にはなっていません。そうした構造の建物が関東大震災で数多く倒壊し、それ以降、西欧木造では当たり前に使われている「筋交い(すじかい)」が在来軸組工法においても使われるようになりました。

三角形という形状は最も安定した構造体で、外力に対して大きな抵抗力があります。この三角形を壁の中に造り出すのが筋交いです。筋交いは柱と梁の接合部直近から柱と土台の直近を結ぶ材です。この斜めの部材を入れることによって構造体が非常に堅固なものになるわけです。筋交いには柱の二つ割り、三つ割りにした厚みの板が使われます。


2×4工法

2×4工法では耐力壁やダイアフラムと呼ばれる床パネルを組合せて居住空間を構成します。台風や地震等の外力を壁や床の「面」で受け、長い接合部を介し力を分散して基礎に伝えます。また、2×4工法の居室は天井、壁、床がすべてパネルで囲まれた堅固な六面体で構成される「箱」のイメージをもった構造体です。

部材接合を釘打ちに頼っている点を心配する向きもありますが、一般木造住宅の釘打ちとは異なり、最大の効果を上げるよう計算されて釘の種類や長さ、使用個所が厳密に決められています。釘の長さは38~88㍉、太さは外径2・3~4・1㍉の6種類の釘が使われますが、一般木造住宅の釘より30%太いため部材接合の強度も高くなっています。また、接合部には2×4工法専用の補強金物が多用され釘接合の弱点を補っています。種々の実験でも釘接合部は「ねばり」があり、大きな力が接合部に加わっても、一挙に破壊が起こりにくく、破壊にかかる時間が比較的長いという結論が出ています。地震等で釘がゆるむとすれば木材と釘の摩擦による保持力の限界を超えた場合ですが、2×4工法で多用される12㍉構造用合板の場合、引抜き耐力は釘一本当たり146㌔あり、よほどの地震でもない限り釘の緩みによるパネル破壊の心配はありません。


木造柱梁構造

柱梁構造(ラーメン構造)は鉄筋コンクリート構造など大型建築物で採用される工法でしたが、近年は耐震性を求め、戸建て住宅にも採用されるようになってきました。「ラーメン」とはドイツ語で「固める」を意味し、基礎の上に垂直に柱を立て、水平に梁を渡すことで建物を支えるシンプルな工法です。接合部ががっちりと固定された立方体の構造が基本です。

ラーメン構造は立方体が荷重に耐える力が強いため壁や柱が少なくて済み、大きな空間や大開口を構成しやすく、スケルトンインフィルなどの導入も容易です。

『住宅新報』2021年4月27日号「住まいと暮らし特集」より)

その2へ続く