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20年・東京都心のオフィス移転動向 拡張と縮小が張り合う

2021.5.13|業界の知識を深める

  • ニュースが分かる!Q&A
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この記事は『住宅新報』の連載「ニュースが分かる!Q&A」から転載しています。

記者A 週に2、3回出社しているが、今日もオフィスにはほとんど人がいないな。

記者B 外出自粛や移動の抑制が求められているからな。最初の緊急事態宣言が出されてから1年が経つ。オフィスに人がいないのも、見慣れた景色だ。20年は「オフィス不要論」があり、やはり必要だという論調が現れたが、テレワーク導入の影響というよりも、結局は企業の業績の問題だろう。

A オフィス賃料はかなりの出費になるし、新型コロナウイルスが引き起こした業績不振が要因だな。

B オフィス市場の動向はどうなの?

A 三幸エステートとニッセイ基礎研究所が共同で研究した内容を3月末に発表した。賃貸オフィスの成約データを基に、20年の東京のオフィス移転動向を分析したものだ。20年の東京都心5区(千代田、中央、港、渋谷、新宿)の成約面積は前年比で31%減少。月別では緊急事態宣言下の5月には前年同月比71%減の過去最大の落ち込みだ。成約面積の減少は3月~8月の半年間で20年通年の9割を占めている。

B 3月~8月にオフィス不要論がささやかれ、その後、やはり必要の論調が出てきた時期と一致するな。


DIが示す現状

A この共同研究では「オフィス拡張移転DI」の指標を駆使している。これはオフィス移転後の賃貸面積が移転前と比較して(1)拡張、(2)同規模、(3)縮小――の3分類で移転件数を集計したもの。0%から100%の間で変動し、基準は50%だ。

B 50%を超えると企業の拡張意欲は強く、50%を下回ると拡張意欲は弱いということだな。

A コロナ禍により、このDIは減少し、20年10月~12月では基準に近い51%だ。

B 拡張と縮小が張り合っている訳だ。

A オフィスの大量供給が続いた19年は70~80%と高水準。企業の拡張意欲が大量供給を消化していた。空室率も低かった。19年と比較すると、20年は厳しく見えるが、基準の50%を下回ってはいない。縮小移転の事例が顕著に増えたということではなさそうだ。もちろん、今後の動向は楽観できないがね。

B エリア別の動向は?

A DIを基に拡張移転が多かったのは「西新宿」「渋谷・桜丘・恵比寿」「麹町・飯田橋」「五反田・大崎・東品川」「新宿・四谷」の順。逆に低かったのは「京橋・銀座・日本橋室町」「新橋・虎ノ門」「赤坂・青山・六本木」「内神田・外神田」「築地・茅場町・東日本橋」の順だ(表参照)。

B どういう傾向があるの?

A 上位の4エリアは「IT業」「不動産業・物品賃貸業」などの従業員数の割合が高い。「IT業」「不動産業・物品賃貸業」の売上高は「宿泊業・飲食サービス業」と比べて、変動が少なく、拡張移転DIも高い。拡張意欲の高い企業が更に集積する好循環がもたらされている可能性があると共同研究では指摘されている。一方、下位エリアでは特徴的な業種集積の傾向はなく、コスト削減に伴う結果と見られている。

B 比較的好調な業種はオフィスの拡張意欲が強い。当然の結果だな。

A コロナの収束で、企業業績の回復も見込まれるが、すべての業種が一様に好転するとは考えにくい。業種によって回復のスピードは異なると見たほうがよい。オフィス市場の回復スピードもエリアごとの特性の違いが影響を与えるかもしれない。

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20年・東京、エリア別のDI

『住宅新報』2021年4月13日号「ニュースが分かる!Q&A」より)