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人生100年時代、安心・安全・健康な暮らし実現へ加速 ~その3~

2021.4.26|業務のプロになる

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SDGs、ESG経営との関連で

「人生100年時代」に入ったといわれる現代の日本社会。教育や介護、働き方など様々な分野でその実現に向けた取り組みが進められつつあるが、住宅産業はそれを支える柱となるものではないだろうか。というのも、暮らしに直結するものであり、住まいが長く安心・安全で快適でなければ人々の健康な暮らしを担保できないからである。そして、このことはSDGsやESG経営の実現などといった課題とも強く関連する。この特集では住宅事業者の取り組みを紹介しながら、「人生100年時代」をキーワードに、住まいに関連する取り組みの方向性を探る。(住生活ジャーナリスト 田中直輝)

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買取リースバック開始住み替えをより容易に

人々が住み替えをしやすくすることも、人生100年時代に資する取り組みと言えるのではないだろうか。高齢化による身体機能の低下などが合った場合、スムーズに高齢者介護施設などに移り住むことができ、そのことは健康状態の維持、改善につながる可能性があるためだ。ポラスグループは昨年6月から、リースバック事業「ポラスの買取リースバック」サービスを開始している。中央住宅不動産ソリューション事業部が手掛けるもので、同社グループが施工した戸建て、マンションに住む顧客が様々な理由で自宅を売却することになっても、3年間は住み続けることができるというものだ。「住宅ローンが予定通り返済できなくなった」「相続対策として、不動産ではなく現金を残したい」「老後資金を確保したい」などのニーズに対応する。

顧客は不動産を同社に売却後、同社と顧客の間で定期建物賃貸借契約を結ぶことで引き続きその不動産を利用できる。3年間の定期建物賃貸借契約終了後は、退去(引っ越し)、再購入の2つの選択肢から選ぶことができる。メリットとして、①住宅ローンが未完済でも利用可能、②ポラスが買取代金を一括支払い、③他人に知られず手続き可能、④固定資産税の支払い不要、⑤住み替えのための仮住まい不要、⑥厳格な金融審査不要、などがある。


自治体とタッグ組み、郊外型団地再生に注力

最後に、「街の再生」について触れておく。空き家問題の象徴として、開発から時間が経過した大規模団地が取り上げられることが増えているが、これは団地で人々の高齢化が進み、それに伴い過疎化や活気の喪失を招いていることが要因だ。そうした課題解決は、住民がより長く快適に暮らすという視点から人生100年時代と、高齢者を含めた様々な人たちが住みよい環境を実現するという視点からはSDGsと、住宅に長く住み続けられるようにし、それにより環境保全に貢献するという意味でESG経営とが相互に関連する。ただ、解決のためには高度な知識やノウハウが必要で、住民だけでは実現することは難しい。

そこで、街の開発に携わり、高度な事業ノウハウを蓄積し大きく成長してきた企業自らが再生に乗り出す事例が出てきた。具体的には、大和ハウス工業が1970年から開発を始め、現在は高齢者率が高まっている郊外戸建住宅団地「上郷ネオポリス」(横浜市栄区)がその一例で、同社は現在、横浜市と持続可能なまちづくりに関する協定を締結し、再生に取り組んでいる。

取り組みの内容は、①コミュニティ形成、就労および社会参加の支援、②住まいおよび新しい住まい方の提案、③地域の移動手段、④今後予想される空き家に対する対応、⑤地域の医療、介護および福祉の推進、⑥高齢者の暮らしや生きがい支援の推進、⑦子育て支援の推進、など。このうち、③については昨年10~11月、横浜市と共に人の移動における社会課題の解決や新たな地域の価値創出に向け、新たな移動手段として近距離モビリティ「ウィル」を活用した実証を実施した。

高齢化により、市内の多くの郊外住宅地では、自宅からバス停やコンビニなどの店舗までといった「ラストワンマイル」の移動が難しい人が増え、外出の機会を妨げる原因となっていることに対応するものだ。

このような取り組みは人々のにぎわい、街の活気を生み出し、人々が長く安心して快適に暮らせる環境を取り戻すことにつながる。ひいては人生100年時代における街のあり方のモデルケースとなると考えられるため、今後の動向が注目される。