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コロナニューノーマルで加速する物流不動産市場 ~その1~

2021.4.26|業務のプロになる

  • 物流不動産
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新たな活用でライフラインに直結

新型コロナウイルスの感染者が全世界累計で一億人を超えた。変異したウイルスが各国に広がり、感染拡大に歯止めがかからない状況が続く。国内のワクチン導入は2月にも接種開始する体制整備を急がれるが、ワクチン保管という新たなソリューションが浮き彫りとなってきた。一方、物流不動産開発計画は各社順調だ。物流特需による発展はこれからが正念場と見られる中、物流DXでイノベーションが加速していくだろう。(㈱イーソーコ総合研究所 取締役会長 大谷巌一)


コロナ対策のソリューション

コロナウイルス感染対策の最大の決め手となるワクチン導入は、国内で2月17日から医療従事者を対象に先行接種が始まった。米製薬大手のファイザー社と独製薬ベンチャーのビオンテック社が共同開発した新型コロナ用ワクチンはマイナス75℃前後の超低温での保管が必須。そこでワクチン保管といった新たな課題が顕在化した。

輸入されたワクチンは、医薬品専用倉庫に保管された後、全国各地の接種場所に輸送される。そこで必要となるのは冷凍庫コンテナだ。独L&Rケルテテクニク社は医薬用ウォークインタイプの冷凍庫コンテナを開発、マイナス80℃の超低温でのコールドチェーンを確立した(写真1)。また、病院に設置するための超低温冷凍庫や断熱材入りの保冷箱へのドライアイスを詰めた保管など、コロナ対策の素地ができ上がっていった。

医薬品保管には医薬品製造業許可(包装・表示・保管)とGMP(医薬品の製造と品質管理に関する国際基準)への適合が求められる。「日本が強みを持つコールドチェーンが生かせる」という見方もあるが、ワクチンは生物学的製剤のカテゴリーに属し、常温(ドライ)10℃~20℃、冷蔵(チルド)マイナス5℃~5℃、冷凍(フローズン)マイナス15℃以下の一般的な温度帯ではなく、倉庫業法に基づく冷蔵倉庫基準保管温度ではマイナス50℃以下のF4級の対象となる。

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【写真1】医薬用ウォークイン冷凍庫


首都圏空室率は0・5%を維持

コロナ第一波の20年4月から6月のGDPは、緊急事態宣言や外出自粛によって国民の消費活動が大きく制限され、マイナス28・8%の急落を記録した。ところが、緊急事態宣言の解除と共に人々が経済活動に目を向け始めた7月から9月にかけ、反動から12月にはGDP実質伸長率22・9%と1980年以降で最大を記録した。

コロナによる広告費大幅削減と東京オリンピック開催が危ぶまれていることが要因し、赤字が大幅にかさんだ電通は、東京・港区汐留の本社ビル売却の検討に入った。国内のビル取引で過去最大級の3000億円規模になると見られる。テレワークが進み、都心型オフィス市場が急激に縮小することで海外投資家には大きなチャンスが舞い込むのではないだろうか。投資市場で伸びを見せるセクターは物流、インフラ、データセンターとなる。CBREの調査によると、20年第3四半期までの国内累計投資額となる2兆6240億円のうち、約半分は物流施設と住宅だった。

不動産の収益力を示す「NOI」(Net Operating Income)を見ると、三菱地所物流リート取得の「ロジクロス大阪」が4・3%、三井不動産ロジスティクスパーク取得の「MFLP茨木」が4・5%を記録。これまで物流施設に投資してこなかった投資家からも大きな関心を寄せられてきた。特に地方は物流不動産分散ニーズを反映し、市場拡大が著しい。売買価格は首都圏より低いため、地方の物流不動産への投資は今後も拡大が予想される。実体経済が悪化しても資産価格は上昇し、国内不動産への投資マネーの流入は今後も続くだろう 。

物流不動産市場をけん引するEC市場は、20年に前年比8%増の10兆7144億円、21年には19年比15%増の11兆4190億円に成長する見通し。イーソーコ総合研究所の調査によると、21~24年までに開発されるマルチテナント型先進物流不動産は、首都圏で168万坪、近畿・中京圏で47万坪に及ぶ。BTS型物流不動産は同時期、首都圏で12万坪となった。大量供給に関わらず、多くの物流不動産では早期契約が進み、竣工前に満床となる事例も相次ぐなど物流不動産の足元は堅調だ。

コロナ禍を契機とした取扱量増大で、拠点増設に積極的な姿勢を見せるのがEC事業者ならびにECを取り扱う物流事業者(3PL事業者含む)だ。物流施設首都圏空室率を見ると、外環道エリアで空室率0・7%、国道16号線0・1%、圏央道0・9%、東京ベイエリアで1・6%と首都圏全体では0・5%を維持した(図表1)。