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相続多発時代の相続税対策と土地活用の手法とは ~その1~

2021.4.26|業務のプロになる

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いわゆる団塊の世代が後期高齢者になり始める23年(令和5年)、いよいよ本格的な「相続多発」時代に突入しそうです。また、同時に人口が減少する中、22年(令和4年)には18歳成人となり、20年代の前半は今後の10年20年を見据えた様々な法や税などの制度改正が予想されています。新型コロナ禍により新しい生活様式が求められる中、世の中も多様化し、土地活用も変化が求められています。(㈱優益FPオフィス代表取締役・佐藤益弘)


相続対策には3つある 相続税対策はメインにすべきではない

相続対策を念頭に「土地を有効活用したい」というご相談は、この新型コロナ禍の下でも根強いと感じます。ただ、最近はインターネット社会の弊害の影響もあり、ご本人にとって都合の良い情報だけをつまみ食いしている方や都合良く勝手な解釈をしている方も多くいらっしゃいます。まず、お客さま対応する際に最初にお伝えするのが、そもそも「土地活用が相続対策になるのか?」ということについて整理をして頂きたいということです。

俗に言う「相続対策」には、「相続税(節税)対策」「納税資金対策」「争族防止対策」の3つあります。

「相続税(節税)対策」は今回のコラムのメインテーマですが、相続税の財産評価や税額計算をする際の特例を駆使して、納税額を軽減しようとすることです。一般的に相続対策といえば、この対策をイメージされるでしょう。ただ、近年の裁判事例では、今までの通達などを適法に活用しても過度な節税対策は否認される可能性もあります。また、税務当局も「節税」という言葉はグレーよりもダークな心証を持っているようで、神経を尖らせています。後述しますが、本質的な意味の相続対策ではないので、主な目的にすべきではありません。

「納税資金対策」とは、相続税の納税資金を準備することです。相続税は所得税など一定の収入から支払う税金ではなく、資産への課税なので、事前に納税額を試算し、手許に納税資金を用意する必要があります。例えば、生命保険に加入したり、不動産を有効活用し、固定資産税など維持費を節約しながら、賃料等を収入源として、納税資金を確保したりします。

「争族防止対策」とは、遺産分割をスムーズに行うための準備をすることです。本質的な相続対策はこの対策になります。相続が原因でその後の家族関係がギクシャクしてしまうという話は良く聞きます。そうならないためにも残す側である親世代が残される側の子供世代にしっかり自分自身の気持ちや意思を伝えることが大切になります。近年の民法改正により、自筆証書遺言が使いやすくなりましたので、上手く活用しましょう。


有効活用方法から相続対策を見ると

また、不動産を有効活用して投資する方法にも「実物不動産投資」「小口化投資」「証券化投資」の3つありますが、土地活用は「実物不動産投資」に当たります。土地をそのまま貸したり、土地の上に賃貸アパートやマンションを建築したり、ワンルームマンションなどを購入したりして、地主や大家として賃貸経営を行うことです。一般的に不動産投資といえば、この実物不動産投資を土地活用の代表例としてイメージされると思います。

相続税の計算上、財産評価方法が現金や株式など金融資産を持つより安価に計算されること、また、様々な特例があり、結果として比較的容易に納税額を軽減できることから、土地や建物など不動産を活用した「相続税(節税)対策」は活用されています。実際に、多額の費用が動くことから経済活動にも寄与している一面もあります。

長期視点で対応する相続対策を考えても、価格の変動が激しい株式など金融商品と比べ、価格や賃料収入が安定していることがメリットで、老後の不労所得の代名詞となっています。

「納税資金対策」という意味では、例えば、土地活用で得た収入を確実に相続人の納税資金として確保しておくため、生命保険に加入するなど一工夫が必要になります。

「争族防止対策」という意味では、財産を分けやすくしておいた方が良いわけです。不動産という資産はそのままの状態では分割しづらい、現金化しづらいという特徴を持っています。そういう意味では法人の形で「実物不動産投資」を行うとか、「証券化投資」のように金融資産として用意することも一考です。後述しますが、共有に関しては解消しやすくなる改正が予定されていますが、後世代に迷惑を掛ける可能性が高くなるので、できるだけ避けましょう。


不動産≒土地を使った相続税の節税対策

例えば、土地の相続税評価は公示価格の8割となっており、公示価格が市場価格と同額だとするとそれだけで2割ディスカウントされることになります。更に賃貸アパートやマンション用地として使用すると貸家建付地 という概念になり、自分の土地であるにも関わらず一定割合ディスカウントが増えます。また、賃貸用の建物も100%自分自身で使えないため借家権分(一般的に30%)のディスカウントがあるので、結果として、相続税を計算する際の財産評価を下げることができます。

更に、通常、賃貸アパートやマンションを建てる際に融資を受ける=借金をすることになりますから、この借金も債務控除として税金計算上差し引け、納税税額を軽減することができます。一方、家賃収入が入るので、この収入から必要経費を引いた収益分を納税資金として計画的に確保することができます。

このように実物不動産投資を行うことで、相続税の節税対策と納税資金準備対策を同時に行うことが出来るため、多くの方が賃貸物件の建設を行い、土地を有効活用したというのが新型コロナ禍前までの状況です。

『住宅新報』2021年2月23日号「資産運用ビジネス特集」より)

その2へ続く