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不動産投資市場を読む。変遷とコロナ後を展望

2022.8.9|業界の知識を深める

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経済活動再始動で高まる投資意欲

2020年に新型コロナが蔓延して以来、日本経済および不動産業界においても先行き不透明感に襲われた。幾度となく政府による緊急事態宣言が発令され、個人も企業においても行動規制が余儀なくされた。22年の現在においてはウィズコロナの時代を迎え、経済状況はまだら模様ではあるが、おおむね回復・適正な成長軌道に乗ってきているようだ。過去の不動産投資業界の変遷と現在の動向、更に今後の市況予想について述べてみたい。
(㈱オフィス野中代表取締役・住宅コンサルタント 野中清志)

●10年ごとに迎える〝節目〟

不動産投資業界においては、おおむね10年というサイクルで大きな動き、節目があった。
まず1980年代前半は、現在の経済状況とは逆に円高が続き、過去のマンション業界の歴史の中でも「不況期」に属する時代であった。85年のプラザ合意を転機として、為替は更に円高となり輸出企業は打撃を受けたので、経済対策の一環として政府は内需拡大政策を取り入れた。特に住宅業界へのテコ入れ策として金融緩和政策が実行され、株式市場や不動産業界に多くの資金が流入し、株高や不動産バブル醸成の大きな要因となった。

一時下落も堅調に推移

行き過ぎた不動産価格抑制のために、90年ごろから日銀による金融の引き締め、不動産業界全体に対する融資規制、いわゆる総量規制の断行、更に不動産投資、節税における損益通算の規制などの要因により、00年に向けて地価・マンション価格が下落のトレンドをたどった訳だ。
しかし、00年ごろになると不良債権処理も進み、不動産業界も息を吹き返していた。08年のリーマンショックに至るまで、不動産価格は上昇トレンドとなった訳である。10年以降は、12年のアベノミクスによる大規模な金融緩和政策、更に東京五輪発表によるアナウンス効果等により、インバウンドの大幅な増加、外資マネーの急速な流入増となった結果、不動産価格は上昇トレンドとなった。
そして今回の新型コロナにより、20年以降、一時的な地価調整局面に入ったものの、不動産投資業界は現在も順調に推移している状況である。

●海外投資ファンドが熱視線

アベノミクス以降、大幅な金融緩和、超低金利政策により、面積が40㎡以上のファミリーマンション業界は大きな恩恵を受け、価格が大幅に上昇した。例えば、不動産経済研究所の調べによると、12年の東京都区内のファミリーマンションの平均価格は5283万円だったが、21年は8293万円と実に56・9%も上昇した。
この要因としては、この間に超低金利での推移、住宅ローン控除の大幅な拡充、更に世帯年収が1500万円クラスのいわゆる「パワーカップル」の台頭などがある。これらがファミリーマンション市場を下支えしたのである。ペアローンを組むことにより、住宅ローン控除を夫婦ダブルで享受できるという恩恵もあった。このように経済対策の一環と位置付けられた住宅政策が、持ち家派にとって大きな住宅購入の後押しとなった訳である。
一方、同じ住宅業界においても投資系ワンルームマンション業界では、価格上昇が比較的穏やかで12年の平均価格2382万円と比べて21年(1~6月)の価格は3125万円と上昇率が31・1%となっている。つまりファミリーマンション業界と比べて、価格上昇トレンドが穏やかであったことが分かる。 この背景には、投資系ワンルーム業界では、価格設定において積算法に加えて収益還元法も採用しているからである。政府の消費者物価指数の中にはワンルームマンションなどの賃料は含まれるが、分譲価格などは入っていない。過去の歴史をたどってみてもワンルームマンションの賃料は比較的穏やかな動き、もしくは上昇トレンドとなっており、キャップレート(期待利回り)も穏やかな動きの中で推移しており、それが分譲価格の動きに反映されている。
このように同じマンション業界でも、それぞれ違った値動きが垣間見える。

新築ワンルームが人気

近年では世界的なクロスボーダー資金の流入により、このコロナ禍においても様々な動きが見られる。 需要が高いのがレジデンス系で、その中でも一棟収益用不動産が人気だ。特に新築のワンルームマンションがファンドからかなり引き合いがある。同研究所の調べによると、東京・首都圏の新築のワンルームマンションの供給戸数は年間約6000戸で、全国の貸家住宅着工件数(年間約32万戸)から見ると極端に少ないマーケットとなっている。ワンルームマンションの年間供給戸数の中にはファンドが購入する戸数はカウントされていないものの、国内を中心としたエンドユーザーに新築として行き渡る戸数が減ることを示唆している。
ファンドの目線では、大体投資利回りが3%から3・5%程度で不動産会社としては十分に採算が合うと考えている。ただし筆者は投資系不動産会社の成長性を考慮した場合、一つの企業における顧客数の増大が企業にとっての大きな財産となると考えている。それは一人の顧客から買い増しや紹介の機会が企業の売り上げに大きく寄与するからである。
現在においてはドル高、円安(為替プレミアム)により海外マネーの国内不動産への流入が加速しており、イールドスプレッドの視点から見ても、日本不動産は海外から見て魅力を増している状況だ。

●投資系ワンルームに先高観も

昨年は米国のウッドショックが話題となったが、現在ではあらゆる建築資材が上昇の局面を迎えている。小麦粉などの食材は短期間で商品価格に反映されるが、不動産業界では土地コスト、建築コストが実際の販売価格に反映されるまでには着工から完成とタイムラグが生じる。
地価においても、国土交通省の公示地価(図1参照)をみると、商業地の地価の反転が鮮明化しており、都内の投資系ワンルームの用地取得については、難航するケースが増えている。
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建設コストや地価上昇に伴う局面においては過去のケースを分析してみると、徐々に供給エリアが都心から離れる傾向がある。今後は城東・城北・城西エリアから東西線などの千葉エリア、京浜東北線などの埼玉県エリア、小田急線や京王線などの神奈川エリアの供給が一段と拡大する可能性を秘めている。
以上のことを勘案すると、現在販売中のワンルームマンションは、来年と比べて相対的に割安感があると言える。

拡大する不動産投資購入層

現在、投資ワンルームマンション市場を支えている層は極めて厚くなっている。
まず一番層の厚いところでは年収が600万円から1000万円で一般企業の管理職クラスが大きな下支えをしている。現状では名目賃金以上に消費者物価が上昇しているので実質賃金は減少であると言えるが、岸田政権による民間企業への給与引き上げのアナウンスが大企業中心に現実化しつつある。
例えば金融業界・鉄鋼業界の他多くの企業で約3%程度の賃上げを表明している。また日本企業全体の中で近年正規の社員数が7年連続増加傾向となっており、昨年は約3565万人と過去最高を記録している。一方、非正規の社員の割合は2年連続で減少している。特に正社員の中では女性社員の増加が際立っており、東京都の場合は金融、ITサービス、情報通信など幅広い分野で増加しているようだ。今後不動産投資をするかどうか別に、しようと思えばできる、つまり投資系ローンが組みやすくなる年収500万円から600万円以上の就業人口が増えてくると考えられる。このような現象は不動産投資業界にとって購入可能層が増えてくる大きな要因の一つとなりうる。

●都心の賃貸需要が下支え

現在、日本の家庭には2000兆円を超える金融資産があると言われている(図2参照)。
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しかし、その多くはシニア層が所有し、なおかつその多くが現預金とな