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コロナ禍2年で暮らし激変 対応に努めた住宅事業者

2022.8.2|業界の知識を深める

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コロナ禍2年で暮らし激変!対応に努めた住宅事業者

消費者マインドが変貌、生産性向上の副産物も

新型コロナウイルスの感染拡大とそれによる混乱(コロナ禍)が始まって丸2年以上が経過し、その影響は社会や人々の暮らしに大きな変化をもたらした。暮らしに直結する住宅産業への影響は特に大きく、消費者のマインドが変わり、その結果、商品や提案内容も含めた営業のあり方などは急激な変更を余儀なくされた。ただ、その一方で業務やサービスなどにおいてデジタル化が進み、生産性の向上も図られたなどという副産物も生み出した。そこで、ハウスメーカーを中心にどのような取り組みをしているのか、改めて確認する。

(住生活ジャーナリスト 田中直輝)


住まいの質へ関心高まる

国土交通省が1月31日に発表した建築着工統計調査報告(年計)によると、令和3年(21年)の新設住宅着工は全体で前年比5・0%増の85万6484戸となった。このうち、持ち家(注文住宅)は同9・4%増の28万5575戸、貸家(賃貸住宅)は同4・8%増の32万1376戸、分譲住宅が同1・5%増の24万3944戸(マンションが同6・1%減の10万1292戸、戸建てが同7・9%増の14万1094戸)。分譲マンションを除くすべてで増加となっているが、これは前年の反動増に加えてリモートワークをはじめとする巣ごもりによる住宅需要に旺盛さがあったためと見られる。
では、コロナ禍の中で消費者マインドはどのように変わったのだろうか。リクルート住まいカンパニーがまとめた「20年注文住宅動向・トレンド調査」によると、「一戸建て(新築建売)」、「一戸建て(中古建売)」の並行検討者が前年よりそれぞれ4㌽程度増加。取り入れたい間取りとして、「ウッドデッキ」「回遊動線」「高い天井高」「広いテラス・バルコニー」「吹き抜け」など空間を意識した間取りの希望が増加したという。これは、あくまで注文住宅を検討する消費者の動向だが、消費者は巣ごもり生活の中で、「快適に暮らせる、ある程度の広さと間取りのある住まい」を求めたことが、コロナ禍という難しい時期に住宅需要に底堅さがあった要因と考えられる。「住まいの質」への注目度がコロナ禍を契機に高まったというわけだ。
さて、コロナ禍は住宅産業の、特に集客や商談に関するスタイルを激変させたことにも言及しておく。最も分かりやすいのが住宅展示場とモデルハウスのあり方で、従来の不特定多数を受け入れるかたちから、予約制に変化した。
これは感染予防が発端だったが、それ以上に集客においてモデルハウスに依存しない、インターネットやバーチャル技術を駆使した、非対面型の手法が確立されたことによる。そして、この手法は、住宅展示場巡りに時間を取られたくないという、近年の顧客の考え方にマッチしたことがあることは言うまでもない。ただ、このような消費者マインドの変化は以前から始まっていたことであり、コロナ禍による危機感から、住宅事業者が本格的に集客・商談スタイルを急激に改めただけだとも指摘できる。 長く生産性の悪さを指摘されてきた住宅業界だが、生産性が高いこうした集客・商談スタイルは今後も変わらず定着していくと見られる。では、住宅事業者は具体的にどのような取り組みをしているのだろうか。


非接触型の集客・商談スタイル模索

感染防止のため非接触型の集客や販売のかたちが模索される中、商談スタイルについてデジタル技術を積極的に活用するようになったのが、コロナ禍における住宅事業者の大きな変化だ。それは例えば、大和ハウス工業が19年11月に発売したウェブ限定の戸建て商品「ライフジェニック」に見られる。消費者がサイトで6つの質問に答えることで、ライフスタイルを診断。その結果により、外観やインテリアのデザインを提案するなど、住まいづくりにおける打合せを効率化できる商品だ。躯体価格は税込み約2千万円ながら、標準でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に対応することも魅力の一つとなっており、コロナ禍の難しい局面の中で同社の戸建て受注量の確保に大きく貢献した。販売スタイルとしてデジタル展示場「ライフスタイルパートナー」という取り組みも始めている。これは、消費者を「直感デザイン派」「理論&こだわり派」「堅実派」という3タイプに分け、それぞれの要望や関心事などをビジュアルで整理し、メールマガジンなどとして発信するというもの。資料請求や来場予約時に「スタイリングノート」としてまとめたものを現場に届けるため、初回面談の精度向上が見込めるという。これに加えて、「メタバースVRモデルハウス」の取り組みも始めている。ウェブ限定商品も含めた取り組みは、感染症対策だけでなく、住まいづくりの情報収集にSNSを積極的に駆使する、特に若い消費者の志向に合わせた販売スタイルの確立を目指したものだという。また、その一方で営業を中心とした生産性の向上も期待されている。


デジタル技術駆使した顧客サービス導入

ここでデジタル技術の積極的な活用は今後、住宅事業者のサービスに更なる変化を与えることに触れておきたい。コロナ禍では営業の現場だけでなく、設計や現場施工にもデジタル化が進んでおり事業の効率化に役立てられているが、将来的には顧客へのサービス向上にも寄与するものと考えられるからだ。そうしたことを予感させる取り組みを行っているのが旭化成ホームズだ。昨年11月、データサイエンス技術を用い、暮らしに関する多角的なサービスを創出するデジタルサービスプラットフォームの構築を目指すことを公表。その第1弾として、住宅内の一部に設けた、セキュリティレベルを選択可能な収納空間の運用サービス「スマートクローク・ゲートウェイ」を運用開始した。
更に、デジタル技術領域における豊かな暮らしの実現を目指し、ディープラーニングやロボティクスにおいて世界トップレベルの技術を持つ「Preferred Robotics」(礒部達社長、以下、PFN)と21年にロボット技術に関する実証研究を実施。家庭用ロボットに作業系(調理・掃除ロボなど)、暮らし支援系(コンシェルジェなど)、見守り・癒し系など多岐にわたり活躍の場があるとの考えから、住宅内における暮らしに寄り添う商品やサービスの提供にあたって、非常に重要な技術分野と考えて3月には同社と資本提携した。今後、家庭用の自律移動ロボットの共同開発を推進するとしている。

生活サポートも充実

ミサワホームも、デジタル技術を顧客の暮らしの質の向上に役立てるため熱心に取り組んでいる住宅事業者の一つだ。住宅設備機器をIoTで一元管理することで、先進的な暮らしを実現するライフサービス「リンクゲーツ」においてAIを活用し、暮らしを快適にする2つのサービス「自家消費制御サービス」と「生活サポートサービス」の提供を、昨年10月から開始している。前者は、過去の消費電力量と太陽光発電量、気象予測情報などから、AIが翌日の余剰電力量を予測し、最適できるよう給湯機器を自動制御するもの。再生可能エネルギーの自家消費率を約1割高めることができるという。後者は、ウェブサービスをつなげるプラットフォーム「IFTTT」(外部事業者のサービス)を通じて、「リンクゲーツ」の各サービスをスマートスピーカーやスマートフォンなどと連携し、外出時に自動でシャッターを閉め、玄関を施錠することができ、生活の利便性を向上させることができるようになるという。


「キレイな空気」に商機見いだす

コロナ禍において住まいの質に注目が集まっているが、その中でも室内の快適性が挙げられる。特に「キレイな空気」については、感染予防をも考慮した提案が見られ、消費者に受け入れられた。積水ハウスでは花粉やPM2・5などの汚染物質に配慮したきれいな空気環境を実現する「スマートイクス」の提案を20年12月に開始したが、「採用率が90%となり、ほぼ標準採用となっている」という。これは、生活空間が風上になるように空気の流れを設計し汚染物質を生活空間に入れない「換気ゾーニング」、換気による熱損失が少ない熱交換型換気システム「アメニティー換気システムⅣ」、微細な汚染物質を従来より早く除去できる天井付空気清浄機「エアミー」、設計段階から空気の流れを可視化する邸別換気シミュレーションなどからなるものだ。
換気だけでなく、温熱も含め空気質向上を訴求する事例も、コロナ禍の中でよく見られるようになった。セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)がその一つ。前期から、抗ウイルス対応フィルターを採用した第一種換気・全室空調システム「快適エアリー・ティーサス」の導入を推奨している。抗ウイルス対応フィルターは、積水化学グループの製品である抗ウイルス加工剤を採用したもので、空調により室内空気が循環する過程でフィルターに付着したウイルスの活動抑制と、人からの飛沫や物に付着して室内に持ち込まれたウイルスの拡散抑制が期待でき、日常生活への不安軽減と快適な室内環境を実現。外気を取り入れる換気システムのフィルターには、花粉やPM2・5などの微細粒子を 99・97%捕集する「HEPAフィルター」を採用し、粉塵浄化性能を強化。外部からの汚染物質の侵入を抑制した空気を建物に循環させる。


断熱リフォーム 既存住宅も強化

新築住宅ではZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及などにより、温熱環境や省エネ性能の向上が進み「住まいの質」が高まっている。その一方で課題となるのが既存住宅の質改善だ。日本にある住宅約5万戸の9割近くが、現行の省エネ基準を満たしておらず、無断熱の住宅も約3割にのぼるという実情があるからだ。パナソニックホームズのグループ会社であるパナソニックリフォームは、新築住宅の省エネ基準と同等の高断熱・高気密を実現し、空気質を高めるリフォームパッケージ「いまドキ健康断熱リフォーム」の提案を4月から本格化している。パナソニックホームズの既存住宅を対象としたもので、既存顧客の住まいへの不安を解消する狙いがある。断熱リフォームについては、1階の居住空間を断熱強化する「ワンフロアまるごと断熱」など2プランを用意。これに加えて、結露やカビの原因となる湿気を十分に排気する換気リフォームも提案する。具体的には、パナソニック製換気システムにHEPAフィルターを組み込んだ「熱交換換気システムHEPAプラス」も採用。外気の花粉やホコリ、PM0・5などの汚染物質をフィルターで捕集し、キレイな空気を各部屋へ直接給気することで、フロア全体の空気質の向上を図る。


バラエティに富む在宅ワークスペース提案

コロナ禍により、人々は自宅で仕事をするといった「ニューノーマル」な暮らしを余儀なくされた。そこで、注目されたものの一つが在宅ワークをいかに行うか。夫婦2人が在宅で働くことができる、子供のオンライン学習などが同時進行となるといった、これまで以上になかったシーンに対応することが必要となったためで、家族の仕事や暮らしに合わせた多様なワークスペースが求められるようになり、その結果、住宅事業者によるバラエティに富んだ提案が行われるようになった。例えば、三井ホームが昨年4月に発売した戸建て商品「ラセーヌ」における提案にそれが表れている。
同社が新たに提案したのは「ワークスタジオ」。間仕切りはガラス仕様による明るい空間であり、独立性を保ちつつ閉塞感を感じず、更に集中できるスペースとなっている。壁面にディスプレイラックを設けているが、これはウェブ会議などを行う際も音や映り込みを気にせずに済むための配慮だ。この他、リビング内にワークテーブルやワークカウンターを配置し、家族が適度な距離感の中で、仕事や学習をできるようにしている。


次世代型分譲開発のあり方を探求

コロナ禍により、郊外住宅地でゆとりのある暮らしを求める消費者が増えていると言われる。分譲戸建ての着工増の一部は、そうしたニーズに対応するものと言えるだろう。
そうした状況に着目し、人々の居住と自然との共生を実現する「ガーデンシティ型」次世代住宅地モデルの開発について、ポラスグループと、早稲田大学総合研究機構「医学を基礎とするまちづくり研究所」(所長=後藤春彦・理工学術院教授)の山村崇(やまむらしゅう)所員(本属:早稲田大学高等研究所講師)らの研究グループが共同研究している。 通常の都市型住宅や郊外型住宅に対して、ICTを活用した新たな就業スタイルの普及(テレワーク、SOHOなど)を前提に、大都市圏外縁部の空間的ゆとりを生かし、現代的居住ニーズに応えながら、自然との共生を志向する新たな住宅地の型(モデル)を提案するものだ。これまでに同社による分譲地の視察検証を実施。今後、複数の分譲地開発の際に、共同研究の成果を反映し、モデルの開発と併せて、「資産価値」「健康価値」「環境価値」の3面からモデルの有効性を事前評価する。
更に、一連のモデル開発のプロセスから一般化可能な知見を抽出し、「計画技術」を構築することで、従来担当者の勘に頼っていた、用地選定から商品企画までのプロセスをシステム化し、住宅地の企画開発期間の短縮と、「3つの評価軸」によるアセスメント手法の確立を達成する。