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東京のオフィス賃貸市場の中期見通し【資産運用ビジネス特集①】

2022.7.19|業界の知識を深める

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不透明感の中に変化の兆し


2020年春から本格化した新型コロナウイルスの感染拡大は、感染状況の悪化と改善を繰り返しながら、ここにきてようやく出口が見えつつある。
コロナ前までは好調であった東京のオフィス賃貸市場は、コロナ禍による需要の減退の影響で、市況は反転し後退局面に入ったが、今年に入り方向感が見いだしにくい動きが続く。
折しも、欧米等では需要急回復によるインフレが起こり、金融政策にも影響を与えている。
そこにウクライナの問題が重なるなど先行きの不透明感は増している。
世界が〝パンデミック〟から〝エンデミック〟に向かう中、東京のオフィス賃貸市場の中期見通しについて考察する。
(一般財団法人日本不動産研究所 研究部長・国際部長 山下誠之)



東京のオフィスの全般的状況


東京オフィス市場全体の現状を鳥瞰すると、賃貸市場においては、コロナ禍の中で空室率が上昇し、それに伴って賃料が低下している。これに対し、取引市場では、国内外のプレーヤーによる投資意欲は引き続き旺盛で、取引利回りはじりじりと低下し、価格は依然として強含みで推移している。また、優良な売却物件の供給不足感が続いていることを背景に、建設市場ではJリート等への売却を想定した開発や事業会社による資産活用を狙った再開発が活発な状況が続いており、近い将来、これら開発プロジェクトの竣工による大量の新規供給が見込まれている。
全国の主要都市では、東京のような厳しい出社制限は行われず、テレワークの普及がそれほど広がらなかったこともあり、オフィス賃貸市場における需給状況に大きな変化がないところもあるが、その他の状況は東京と類似している。このうち賃貸市場と取引市場の動きの違いについて、三鬼商事と日本不動産研究所の調査データで確認すると、賃料がコロナ禍で下落基調に転じている一方、期待利回り(右の反転軸。上に行くほど利回りが低くなる。つまり同じ収益であれば価格は高くなる)は、コロナ前から横ばいが続いていたが、21年10月時点調査以降は連続して低下を示している(図表1)。