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電子契約の仕組みと注意点とは≪不動産情報化特集≫

2022.6.28|業界の知識を深める

  • DX
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不動産取引に導入


旧態依然と思われていた不動産業界においても、急速にDXの波が押し寄せている。
重要事項説明書や契約書面を電磁的方法によって提供することを可能とする今回の宅地建物取引業法の改正は、不動産取引業務を全面的にオンライン化する途を拓くものである。
今後、電子契約の急速な普及が予想されることから、規模にかかわらず、すべての不動産事業者が導入の検討を始めるべきである。
(不動産法務サポートオフィス行政書士事務所代表・一般社団法人不動産ビジネス専門家協会代表理事 中沢誠)


電子契約とは何か


電子契約とは、従来の紙の書類に押印・署名する代わりに、電子データに電子署名を行うことで、当事者の意思表示の証拠とする新たな契約方式をいう。
電子契約についても、電子署名が行われているときは真正に成立したものと推定されるため、紙の契約書に署名押印がなされた場合と同様の法的な効力が認められている(電子署名及び認証業務に関する法律第三条)。


メリットとデメリット


電子契約の導入には、さまざまなメリットがあるが、主に次の3つのポイントが挙げられる。
①業務の効率化
電子データをオンラインでやり取りするだけであるため、これまで契約業務で必要とされてきた印刷、製本、押印、郵送、スキャン等、多くの業務が不要になる。また、押印等のためだけに出社をする必要がなく、テレワーク・リモートワークによって契約業務を行うことができる。
②コスト・時間の削減
用紙代、印刷代、郵送費、保管費用、交通費、事務作業を行う従業員の人件費等が節減できる。また、紙の契約書を作成しないことから、印紙税がかからないこともコスト削減効果が大きい。更に、書類の郵送でのやり取りに要していた時間等も削減できることから、契約締結までの時間を短縮することもできる。
③セキュリティ 対策の強化
紙の契約書は、盗難、自然災害、火事等によって消失してしまうリスクがあるものの、電子契約であれば、データの分散保管によってリスクを低減できる。

デメリット(リスク)

メリットの多い一方で、少なからずデメリット(リスク)もある。
①契約締結権限の疑義(なりすましリスク)
電子契約はオンライン・非対面で締結するものであるため、相手方において誰が締結に関する操作を行ったかを直接確認することができない。
②取引相手の同意 ・理解の必要性
電子契約は利便性が高い反面、導入に掛かるコストや手間もあり、自社の都合だけで導入することができず、取引相手の同意や利用方法を理解してもらう必要がある。
③サイバー攻撃等による情報漏洩リスク
電子契約はサーバーやクラウド上で管理しているため、サイバー攻撃やコンピュータウイルスによる被害のリスクがある。しっかりしたセキュリティ対策を講じているベンダーを選定するとともに、自社のシステムのセキュリティ対策も確実にしておく必要がある。


電子契約の2つの方式


電子契約には、契約当事者ではないサービス提供事業者が、当事者の指示にもとづいて電子署名を付与する「立会人型」と、契約当事者本人が電子署名を付与する「当事者型」の2つの方式がある。
いずれも法的拘束力を有する方式であるが、特に高額な取引である不動産売買契約については、契約当事者の「なりすまし」リスクを防ぐために当事者型を利用することが望ましい。一方で、必ずしもすべての契約を当事者型とする必要はなく、契約の種類によって使い分ければ良い。

電子署名とタイムスタンプ
電子文書では、文書の「完全性」が求められるが、完全性の証明には、電子文書に、「いつ」「誰が」「何を」記しているのかという、3つ要素が改ざんされていない事の証明が必要となる。
このために利用されるのが「電子署名」と「タイムスタンプ」という2つの技術である。「電子署名」とは、紙文書における印鑑や手書きの署名のように、電子文書の本人性と非改ざん性を証明する技術である。
電子署名は、本人であることを証明するために、認証局(CA)と呼ばれる機関が発行する「電子証明書」を用いて行われるが、電子証明書は従来の紙文書における印鑑証明書のような役割を果たしている。