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キャリアアップを考える

宅建業のやりがいと魅力 宅建士合格から独立開業への道のり

2021.4.26|キャリアアップとは

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今年度の宅地建物取引士試験について、通常日程による試験を受けられた方は、先日、合格発表がありました。また、追加試験の日程が指定された方は、今、まさに本試験へ向けた最後の頑張りをされているところではないでしょうか。皆さんが目指してきた「宅地建物取引士」の資格を最大限に活かした仕事といえば、宅地建物取引業(以下「宅建業」という)です。(プランサービス代表取締役 本鳥有良)


宅建業のやりがい

会社勤めをしている方が退職して起業すると言えば、喫茶店やラーメン店などの「飲食業」や、雑貨などを販売する「小売業」など様々な業種が挙げられます。

当然、それぞれが起業する方にとってやりがいのある仕事であることは言うまでもありませんが、私は、人々の生活の基盤となる不動産を扱う宅建業に大きなやりがいと魅力を感じています。

例えば、多くの方が就職、結婚、出産、子育てなどの人生における節目で住み替えをされるものです。そして、契約が成立して、お客様の満足そうな笑顔を見ると、自分の仕事にやりがいを感じると共に、その方が新しい生活を始める瞬間に立ち会えたことへの喜びも感じます。

私にとっての宅建業は、単に不動産という商品を扱う仕事というものではありません。

その人が次の新しい人生をはじめるためのお手伝いをさせてもらえる大切な仕事に思えるのです。


起業する魅力

様々な業種がある中で、宅地建物取引業者(以下「宅建業者」という)として起業することの魅力について、いくつかご紹介します。

①年齢や性別を問わない

宅建業は、年齢に関係なく仕事をすることができます。むしろ、年を重ねることで得られる経験が活かせる仕事であると思っています。人生100年時代と言われる中、定年退職を気にすることなく、いつまでも現役で働き続けることができる仕事というのは、とても魅力的なものではないでしょうか。また、男女による仕事の差もありませんから、売買、賃貸を問わず、様々な方が十分に活躍できる仕事だと思います。

②業界未経験でも大丈夫

業界未経験者でも開業時に業界団体(以下「協会」という)へ加入すれば、十分にやっていけると思います。例えば、協会では業務に関する相談窓口を設けているだけでなく実務に則した研修会や最新情報セミナーなどが定期的に行われていますし、法令改正等に対応した各種書式等の提供、業務上のトラブルに備える賠償責任保険などの提供も行われているので、未経験者でも安心して業務が行えるような支援体制が講じられているのです。また、仲介業で扱う物件情報の多くは指定流通機構が導入している情報ネットワークシステム「レインズ」により宅建業者間で共有されているのですが、協会に加入することで指定流通機構への入会もできるようになるため、開業したばかりで直接に媒介の依頼を受けた物件を持っていなくても営業活動を行うことが可能になります。

③小規模・小資本・少人数で開業できる

宅建業者として免許を受けて開業するとき、各都道府県にある協会へ加入して、保証協会に加入すれば、開業に必要な営業保証金1000万円の供託に代えて、60万円の弁済業務保証金分担金を負担すればよいことになります。つまり協会及び保証協会へ加入すれば、開業に必要な資金を抑えることができます。また、宅建業の中でも仲介業を事業の柱とすれば、扱う商品は物件情報となるため不動産そのものを仕入れる必要がないことから、数か月分の運転資金があれば十分に開業することが可能となります。事務所等の開設でも、インターネットの普及により、駅前の1階店舗といった家賃の高い場所へ開設することの必要性が薄れたため、開業にむけた初期費用を安く抑えることが可能です。そして、地域密着型の仲介業とすれば、事務所等から最寄りの駅を中心とした徒歩圏が重要な活動地域(商圏)となることから、多くの従業員を雇う必要はなく、最初は経営者ひとりでも営業が十分に可能です。

④兼業により事業規模拡大の可能がある

宅建業は他の事業との相乗効果が高く、兼業に向いているとも言えます。例えば、今後は中古住宅の流通市場拡大が期待されるため、「リフォーム」や「建物状況調査」といった分野を取り入れることが事業展開の鍵となってくるはずで、建設業や設計事務所等との兼業効果は大いに期待できます。また、賃貸仲介業であれば借家人が加入する借家人賠償責任保険、売買仲介業であれば買主が加入する火災保険等の損害保険に関する募集行為を行う代理店業務を兼業することでも事業規模の拡大が図れます。


独立開業への心構え

独立開業する上での心構えは?と問われたら、すべての仕事に対する自己責任と経済的な不安定を受け入れる覚悟を持つことです。会社を辞めて独立をすれば、今までなかった自由を手に入れることができます。これは、単に時間的な自由だけでなく、仕事そのもの、自分の考え方ややり方など幅広い意味での自由です。一方で、自由は、すべての仕事について責任を負うことを意味します。そのことを受け入れる覚悟必要です。そして、独立することで経済的には不安定になりやすいという現実も受け入れる覚悟が求められます。

実際に、不動産業は独立開業しやすいものの、誰もが成功できるというものではありません。例えば、不動産取引には1年を通して繁忙期と閑散期があることや、景気などの影響も受けやすいといった特徴があるので、恒常的な支出を賄いながら安定した経営を行うのはとても難しいことなのです。自分で会社を興して開業するには、さまざまな覚悟が求められるため、独立することに不安を抱く人も多くいるのではないかと思いますが、そのようなときに自分を支えてくれる人がいれば、とても心強いものがあるものです。よく、経営者とは孤独だと言われますが、日ごろから信頼できる人との繋がりを大切にしていくことも、起業に向けた心構えの一つといえるのかもしれません。コロナ禍で宅建業の住宅の取引については、比較的、業績への影響が少なく、堅調に推移している状況にあります。

コロナ禍が収束した後の日常というものが、どのようなものになるかわかりませんが、宅建業は地域社会の発展に貢献できるすばらしい仕事だと思いますので、この機会に、独立開業へ思い巡らすのはいかかでしょうか。

『住宅新報』2020年12月8日号「独立開業特集」より)