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『不動産・困ったときの知恵袋』〔第8回〕 競売物件についての契約不適合責任はどうなるのですか?

NEW 2022.1.19|業務のプロになる

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〈不動産取引に関するお役立ち情報コーナー〉
『困ったときの知恵袋』〔第8回〕
競売物件についての契約不適合責任はどうなるのですか?


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契約不適合責任に関する汚染土地のトラブル事案の相談が続いていますが、先日仲介した工場跡地の売買(転売)でもトラブルが発生しました。


その土地はもともと競売物件であり、土地の汚染については執行裁判所の執行官による「現況調査報告書」と評価人による「評価書」の関係部分の写しを重要事項説明書に添付し説明していました。

そのため業法違反はないと考えていたのですが、買主の方はその説明の内容より売買価額そのものが高すぎるというクレームを付けてきました。


理由としては以下の2点です。

・競売物件の場合、入札の標準となる売却基準価額が一般の市場価額より20%~30%安く設定されている
・本件の工場跡地のような市場性の乏しい競売物件については、その売却基準価額から更に20%まで控除したいわゆる「買受可能価額」での買受けが可能になっている


売主は、単に右から左に転売するだけで仕入値に近い利益を得ることができるのだから、引渡し後の今からでも専門の調査機関による土壌汚染調査を行うべきだと主張しています。

また、この土地の売買契約においては、「売主は契約不適合責任を負わない」という特約をしているので、今後が心配というのです。


このようなトラブルに対し、仲介業者としてはどのように対応したらよいでしょうか。

なお、買主は、本件の解体された工場と同じような工場を経営する同業者で、売主(転売人)は宅建業者です。

解決のための知恵

結論から申し上げれば、本件の売買価額の設定に特別の問題でもない限り、このようなトラブルは契約の当事者間で話し合うべき問題であって、仲介業者がどうこういう問題ではありません。


なぜならば、この取引において仲介業者が売主の言い分だけを聞いて価額設定をしたわけではないため、買主が主張している競売物件特有の価額評価の方法は、競売市場において一般に行われている民事執行法上の評価方法だからです(民事執行法60条①②)

ましてや、本件の売買契約においては、売主は契約不適合責任を負わないということで、当事者が合意しているのですからなおさらです。


ちなみに競売物件については、競落人は債務者(物件の所有者:本件の場合の元の売主)に対し、物件の種類・品質に関する不適合の責任追及ができません(民法568条④)

したがって本件の売主である競落人(宅建業者)も買主に対し、契約不適合責任を負わない旨の特約をしたのだと思われます。


ただ、ここで1つだけ注意しておきたいことは、買主が独自に調査をした結果、土壌汚染対策法上の特定有害物質が検出され、その含有量も相当量が見込まれるといったような場合に、その対策費の額のいかんによっては、本件の売買契約そのものが錯誤無効というような事態に発展することもあり得るということです。


なぜならば、本件の売買契約においては、当事者の間ではそのような事態は最初から想定せずに価額の合意がなされ、売主が契約不適合責任を負わない旨の特約をしていると考えられるからです。

つまり、契約不適合責任を負わない旨の特約は、合意があれば有効なのですが、そのためにはその不適合の内容が当事者の想定していた範囲内のものであることが必要で、その当事者の想定を超えるような不適合が発見された場合には、特約の効力は否定されます(東京地判平成20年5月29日、同平成9年5月29日ほか)


なお、本件の仲介をした担当者の話によれば、本件のトラブルの原因は、買主が物件の引渡し後になって競売物件についての価額評価や入札についての特殊事情を知り、その結果、土壌汚染のことが心配になって「価額が高すぎる」といった筋違いの主張になったものと思われるということです。

もともとは同業者の工場跡地が手に入るということで、喜んで契約を締結したと証言しています。

〔本件における重要事項説明書の記載内容(評価書より抜粋)〕
簡易調査を行ったが、有害物質使用の状況は不明である。化学薬品を扱う工場であり汚染リスクは存在するものとみられるが、汚染の有無は不明であり、調査機関による土壌汚染調査を行わないと断定できない。


このようなトラブルに巻き込まれないよう、競売物件に関しては詳細まであらかじめ把握しておくことが重要になります。



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