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ハウスメーカーが海外での戸建て事業強化を積極化~その1

2022.1.11|業界の知識を深める

  • 新たな日常
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コロナ禍でも業績拡大、新たな進出先開拓も

ハウスメーカーによる海外進出、中でも戸建て住宅分野での動きが活発化している。世界的な新型コロナウイルスによる混乱(コロナ禍)の中でも大きな業績、収益拡大を実現している企業もあるくらいだ。進出した国や地域も従来の米国、豪州、アジアだけでなく、欧州などにも広がりを見せており、今後の推移が注目される。そこで、この記事ではハウスメーカー各社の進出の状況や背景、狙いなどについて、戸建て住宅事業を中心にまとめてみた。
(住生活ジャーナリスト 田中直輝)

国内の縮小傾向に危機感で

ハウスメーカーによる海外進出の動きが顕在化し始めたのは、2000年以降のことで、日本における少子高齢化や人口・世帯の減少、それに伴う国内の新築住宅市場の縮小傾向に対して徐々に危機感が高まり始めた時期と重なる。そのため、ハウスメーカー各社が描く成長戦略の中で、海外への進出が検討され始め、模索が始まった。つまり、当然ながら、海外進出は国内住宅市場との兼ね合いで発生したというのが大前提である。
ただ、それだけではなく、海外進出にはいくつかの要因が他にもある。それは国内市場で得た利益の投資先を求めた結果だということ。市場調査も人材の配置も投資であり、その中で国内での事業を展開するにもリターンが大きい、将来性があると判断されたのが海外での事業だったのだと、筆者は考える。特に人材については、00年より以前では海外で事業の展開に寄与する人材が、一部の企業を除きほとんどいなかったが、現在ではそうした人材を数多く抱えるようになっている。
また、日本には他の国や地域の住宅市場の状況と異なる点がある。それは、売上高が4兆円を超え、もはやスーパーゼネコンと化している大和ハウス工業や、累計で建築戸数世界一(約250万戸、21年1月末現在)を誇る積水ハウスなどの大資本メーカーに加え、地場住宅事業者、住まいに高度な要求をする消費者といった、世界に類を見ないユニークでバラエティに富んだプレーヤーが存在すること。更には、地震国であるが故の品質などへのこだわりも日本の住宅産業の強みであり、海外進出はそうしたベースの元に成り立っているものとも見られる。

時代の変化も後押し

時代の変化も後押ししているように見える。近年急速に危機感が高まっている地球温暖化対策の中で、住宅の省エネ化が注目されており、世界各国で日本で言うZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)レベルの住宅の建設需要が高まっている。その中で日本での住宅供給の実績が強みになっているのだ。更には、DX(デジタル・トランスフォーメーション)などといった、効率と品質を同時に高めることが求められる時代にもなっている。特に効率化、生産性の向上は、プレハブ技術やプレカット技術も含め、世界的にも高い水準があり、そうした日本の住まいづくりで培われてきたノウハウが海外で評価されるようになってきたのが、ハウスメーカーによる海外進出の要因となっている。
とはいえ、住宅産業は国や地域の文化や歴史、生活習慣に根ざすもの。それ故、住宅供給のあり方は政治や経済など現地の状況にも左右されるため、進出と定着にはそれぞれに適したかたちが必要になる。特に、重要なこととして、各ハウスメーカーの事業理念などを共有する現地パートナーとの協業がある。また、供給のスタイルは、現地の既存工法によるもので、つまりは日本で培ってきたノウハウや技術を十分に生かし切っているというわけではなく、大きな課題の一つとなっている。
なお、現地での住宅供給のみならず、ポラスグループがプレカット事業で海外産木材を調達、三井ホームが北米で2×4住宅のパネル製造・建て方事業を展開するなど、現在の住宅産業は複雑なかたちで海外との関わりがあることも付け加えて指摘しておく。