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『不動産・困ったときの知恵袋』〔第7回〕 契約不適合責任に関する各種免責特約は本当に有効なのですか?

2021.12.24|業務のプロになる

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〈不動産取引に関するお役立ち情報コーナー〉

『困ったときの知恵袋』〔第7回〕 契約不適合責任に関する各種免責特約は本当に有効なのですか?


困りごとの内容

2Q==

売主の契約不適合責任に関する特約について、今、契約の当事者間でトラブルになっています。

その特約の内容は次のとおりなのですが、その特約に関する双方の主張がいずれも理由がありそうなので、対応に困っています。

〔特約の内容〕

本契約に基づく売主の契約不適合責任は、その責任の範囲が定められています。

■建物について

①雨漏り
②白蟻の被害
③建物の構造上主要な部位の木部の腐食
④給排水設備の故障

に限定し、かつその期間も本物件引渡し後6か月以内に売主に通知したものに限ります。

■土地については

本件の土地の一部(約100㎡、別添図面朱塗り部分)が工場跡地であったために、その代金を500万円値引きすることにより、土地全体について契約不適合責任を負わないものとします。


〈買主の主張〉
この土地はもともと住宅兼工場の土地だったので、その工場部分の土地に油が浸み込んでいて、今も臭っている。
これは重大な告知義務違反であり、契約不適合であるから、その追完費用として土壌改良費1,000万円を支払ってもらいたい。

〈売主の主張〉
本物件の土地の一部(約100㎡)が10年前まで工場跡地であったことは、仲介業者から買主に対し重要事項として説明をしている。
そのために、土地の価額も500万円値引きしている。よって、売主には告知義務違反はない。

また、油の臭いも受忍の範囲内のものであり、そもそも土地については契約不適合責任を負わない旨の特約をしているし、引渡し後6か月以上経過しているので、買主は、売主に対し契約不適合責任を追及する権利はない。


解決のための知恵

このような場合に大事なことは仲介業者は裁判官ではありませんので、双方の主張に白黒を付けるということではなく、それぞれの主張について仲介をしたプロの業者として意見を述べるということです。

具体的には、まず、買主の主張する「油の匂い」がすることを告知しなかったのは告知義務違反だという点については、それが常時臭うのならともかく、仲介をした担当者もそれに気が付かなかったということですから、その臭いは程度の問題と言ってよく、売主の言ういわゆる「受忍の(許容される)範囲内」のものであると考えることもできます。

しかし、それはあくまでも売主の言い分であって、現に専門家の調査によって1,000万円もの土壌改良費がかかると判断されているため、油が相当深く浸透していると考えられ、無視するわけにはいきません。

したがって、売主としても、値引きした500万円では不足するわけですから、更に500万円の追加支払いをするかどうかの判断をする必要があります。

追加支払いだけで解決するかどうか、その際に売主が考えなければならないことが2点あります。

まず第1点として、追加支払いの交渉がこじれて、他の汚染物質の調査や除去といった問題にまで発展しないかどうかということ。

第2点として、当初の500万円の値引きそのものがこの油の浸透事実にあったのではないかということ。
つまり売主が油の問題を故意に隠していたのではないかという指摘がなされ、それが買主に対する「知りて告げざる事実」(民法572条)という重大な問題に発展するのではないかということです。


この事案で当事者が定めている売主の責任限定特約や期間の短縮特約は、いずれも売主が宅建業者でない限り、任意規定として当事者が自由に定めることができますので、裁判例においても、これをいずれも有効と解しています。
(東京地判平成27年6月16日、平成27年4月1日、平成28年3月29日ほか)

そのため、契約不適合責任の範囲の限定や期間の短縮特約もすべて無効になってしまいますので、売主としては、話を長びかせないで早く解決することが大事になります。


このような内容は宅地建物取引士の試験で問われます。
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