21年度 賃貸不動産経営管理士試験 本社解答と解説 【問21~30】

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【問 21】

賃料増減請求に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。

 

ア 賃料増減請求は、請求権を行使した時ではなく、客観的に賃料が不相当となった時に遡って効力を生ずる。

イ 賃料改定を協議により行うとする特約が定められている場合であっても、賃料増減請求を行うことができる。

ウ 借主が賃料減額請求を行ったが、協議が調わない場合、減額を正当とする裁判が確定するまでの間、借主は減額された賃料を支払えば足り、貸主は従前の賃料を請求することができない。

エ 賃料改定については、合意が成立しなければ、訴訟によって裁判所の判断を求めることになるが、原則として、訴訟提起の前に調停を申し立てなければならない。

 

1 ア、イ

2 ア、ウ

3 イ、エ

4 ウ、エ

 

 

正 解

 

 

 

アは不適切。賃料増減額請求権の意思表示が相手方に到達したときに効力が発生する。

 

イは適切。最判昭56.4.20の判示の通りである。

 

ウは不適切。借主が減額請求を行った場合に当事者間で協議が調わない場合、賃貸人は減額を相当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の賃料の支払いを請求することができる(借地借家法32条3項本文)。

 

エは適切。賃料増減請求は調停前置主義が採用されている(民事調停法24条の2)。

 

以上によりイとエが適切で、正解は③となる。

 

【問 22】

賃料回収及び明渡しに向けた業務に関する次の記述のうち、不適切なものの組合せはどれか。

 

ア 明渡しを命じる判決が確定すれば、貸主は、強制執行によることなく、居室内に立ち入り、残置物を処分することができる。

イ 貸主は、契約解除後、借主が任意に明渡すことを承諾している場合、明渡し期限後の残置物の所有権の放棄を内容とする念書を取得すれば、借主が退去した後に残置物があったとしても自らこれを処分することができる。

ウ 貸主は、借主の未払賃料について、支払を命じる判決が確定しなければ、賃料債務の有無及び額が確定しないため、敷金を充当することができない。

エ 貸主は、賃貸借契約書を公正証書で作成した場合であっても、建物の明渡しの強制執行をするためには、訴訟を提起して判決を得なければならない。

 

1 ア、イ

 

2 ア、ウ

 

3 イ、エ

 

4 ウ、エ

 

 

正 解

 

 

アは不適切。明渡しを命じる判決が確定しても、貸主は強制執行によらなければ居室内への立ち入りや残置物を処分することはできない。

 

イは適切。

ウは不適切。貸主は、借主の未払賃料についての支払いを命じる判決が確定していなくても敷金を充当することができる。

 

エは適切。公正証書に執行力が認められるのは金銭債務の支払いが履行されない場合に限られている。

 

以上からアとウが不適切で、正解は②となる。

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【問 23】

賃貸住宅標準契約書(国土交通省住宅局平成 30 年3月公表)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 賃貸住宅標準契約書では、建物賃貸借の目的を「住居」と「事務所」に限定している。

2 賃貸住宅標準契約書では、更新料の支払に関する定めはない。

3 賃貸住宅標準契約書では、賃料は、建物の使用対価のみを指し、敷地の使用対価は含まないものとされている。

4 賃貸住宅標準契約書では、共用部分にかかる水道光熱費等の維持管理費用は、貸主が負担するものとされている。

 

 

正 解

 

 

 

①は誤り。賃貸住宅標準契約書では、建物賃貸借の目的を「住居」と「事務所」に限定していない。

 

②は正しく、正解。同契約書に更新料に関する定めはない。

 

③は誤り。建物賃貸借契約における賃料は、建物だけでなく敷地の使用対価も含まれると解されており、同契約書もこの解釈を前提としている。

 

④は誤り。同契約書5条で共用部分の維持管理費は借主が支払うこととされている。

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【問 24】

Aを貸主、Bを借主とする建物賃貸借契約においてBが死亡した場合に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。ただし、それぞれの選択肢に記載のない事実及び特約はないものとする。

 

1 Bの内縁の妻Cは、Bとともに賃貸住宅に居住してきたが、Bの死亡後(Bには相続人が存在するものとする。)、Aから明渡しを求められた場合、明渡しを拒むことができない。

2 Bの内縁の妻Cは、Bとともに賃貸住宅に居住してきたが、Bの死亡後(Bには相続人が存在しないものとする。)、Aから明渡しを求められた場合、明渡しを拒むことができない。

3 Aが地方公共団体の場合で、賃貸住宅が公営住宅(公営住宅法第2条第2号)であるときに、Bが死亡しても、その相続人は当然に使用権を相続によって承継することにはならない。

4 Bが死亡し、相続人がいない場合、賃借権は当然に消滅する。

 

 正 解

 

 

 

①は不適切。この場合Bの賃借権はBの相続人が承継するが、判例は、相続人がBと同居していた内縁の妻に明渡しを求めることを権利濫用として認められないとしている(最判昭39.10.13)。

 

②は不適切。この場合Bと同居していた内縁の妻が反対の意思表示をしない限り賃借権を承継する(借地借家法36条)。

 

③は適切で、正解。最判平2.10.18の判示の通り。

 

④は不適切。Bに相続人がいない場合、賃借権を含む相続財産は法人とされ(民法951条)、相続財産管理人が財産の処分等を行い、その業務終了後に残った財産が国庫に帰属する(同法959条)。

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【問 25】

建物賃貸借契約における必要費償還請求権、有益費償還請求権及び造作買取請求権に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。

 

ア 賃貸物件に係る必要費償還請求権を排除する旨の特約は有効である。

イ 借主が賃貸物件の雨漏りを修繕する費用を負担し、貸主に請求したにもかかわらず、貸主が支払わない場合、借主は賃貸借契約終了後も貸主が支払をするまで建物の明渡しを拒むことができ、明渡しまでの賃料相当損害金を負担する必要もない。

ウ 借主が賃貸物件の汲取式トイレを水洗化し、その後賃貸借契約が終了した場合、借主は有益費償還請求権として、水洗化に要した費用と水洗化による賃貸物件の価値増加額のいずれか一方を選択して、貸主に請求することができる。

エ 借主が賃貸物件に空調設備を設置し、賃貸借契約終了時に造作買取請求権を行使した場合、貸主が造作の代金を支払わないときであっても、借主は賃貸物件の明渡しを拒むことができない。

 

1 ア、イ

 

2 イ、ウ

 

3 ウ、エ

 

4 ア、エ

 

正 解

 

 

アは適切。必要費償還請求権の規定は任意規定であり、これを排除する旨の特約は有効である。

 

イは不適切。この場合、借主は留置権(民法295条)を主張して明渡しを拒むことができるが、明渡しまでの賃料相当損害金は負担する必要がある。

 

ウは不適切。有益費の償還範囲は、賃借人が支出した金額または対象物の価値の増加額であり、賃貸人がいずれか低い方を選択することができるとされている。

 

エは適切。造作買取請求権を行使した場合であっても、借主は同時履行の抗弁権及び留置権を主張して建物の明渡しを拒むことはできない。

 

以上から、アとエが適切で、正解は④となる。

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【問 26】

定期建物賃貸借契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 中途解約特約のある定期建物賃貸借契約において、貸主は契約期間中であっても、正当事由を具備することなく契約を解約することができる。

2 定期建物賃貸借契約書は、同契約を締結する際に義務付けられる事前説明の書面を兼ねることができる。

3 賃貸借の媒介業者が宅地建物取引業法第35条に定める重要事項説明を行う場合、定期建物賃貸借契約であることの事前説明の書面は不要である。

4 定期建物賃貸借契約において、賃料減額請求権を行使しない旨の特約は有効である。

 

正 解

 

 

①は誤り。定期建物賃貸借契約において、賃貸人に中途解約権の留保を認める旨の特約を付してもその特約は無効である(東地平25.8.20)。

 

②は誤り。事前説明書面は定期賃貸借契約書とは別個の独立した書面であることが必要とされている(最判平24.913)。

 

③は誤り。媒介業者が重要事項説明を行ってもそれだけでは事前説明を行ったことにはならず、事前説明書面は必要である。

 

④は正しく、正解。特約によって賃料減額請求を排除することができる。

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【問 27】

Aを貸主、Bを借主とする建物賃貸借においてCを連帯保証人とする保証契約に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。ただし、それぞれの選択肢に記載のない事実はないものとする。

 

ア Bが賃料の支払を怠ったので、AがCに対して保証債務履行請求権を行使した場合、Cは、Bには弁済する資力があり、かつその執行が容易である旨を証明すれば、AがBの財産について執行を行わない間は保証債務の履行を免れる。

イ Aの賃料債権を被担保債権とする抵当権がD所有の甲不動産に設定されていた場合、Dの負う責任は甲不動産の範囲に限られるところ、Cの負う責任はCの全財産に及ぶ。

ウ Cが自然人ではなく法人の場合は、極度額を書面で定めなくてもよい。

エ Bの賃借人の地位がAの承諾の下、第三者に移転した場合、Cが引き続き連帯保証債務を負担することを「保証の随伴性」という。

 

1 ア、イ

 

2 イ、ウ

 

3 ウ、エ

 

4 ア、エ

 

 

正 解

 

 

アは誤り。連帯保証人であるCには検索の抗弁権(賃借人が債務を弁済する資力があり、かつ執行が容易であることを証明した場合にまず賃借人の財産に執行するように要求できる権利、民法43条)は認められず、誤りである。

 

イは正しい。抵当権設定者Dは抵当不動産の範囲に限られるが、保証人Cは無限責任を負担することになる。

 

ウは正しい。個人根保証については極度額の定めを書面によって行うことが要請されているが(民法465条の2第1項~3項)、法人にはこのような規制は存在しない。

 

エは誤り。保証の随伴性とは、主たる債務の債権者に変更が生じた場合に保証債務も債権者の変更に伴って新債権者に移転する性質をいうものであり、賃借人の地位が移転した場合に当てはまるものではない。

 

以上からアとエが誤りで、④が正解となる。

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【問 28】

Aを貸主、Bを借主とする賃貸住宅(以下、「甲建物」という。)の所有権がCに移転した場合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。ただし、それぞれの選択肢に記載のない事実はないものとする。

 

1 Aが甲建物を譲渡する前にBがAから引渡しを受けていれば、賃貸人たる地位はCに移転する。

2 Aが甲建物を譲渡する前にBがAから引渡しを受けている場合に、AC間で賃貸人の地位をAに留保し、かつCがAに甲建物を賃貸する旨の合意をすれば、Bの承諾がなくても、賃貸人の地位はAに留保される。

3 Aが甲建物を譲渡する前にBがAから引渡しを受けている場合に、所有権移転登記を経由していないCから甲建物の賃料の支払を求められても、Bは支払を拒むことができる。

4 Aが甲建物を譲渡する前にBがAから引渡しを受けておらず、かつ賃貸借の登記も経由していない場合に、AC間で賃貸人の地位を移転することにつき合意しても、Bの承諾がなければ、賃貸人の地位はCに移転しない。

 

正 解

 

 

①は正しい。賃借人Bが建物引渡しによって対抗力を備えた場合(借地借家法31条1項)、当該不動産の譲渡によって賃貸人の地位は譲受人Cに移転するとされている(民法第605条の2第1項)。

 

②は正しい。このようなAC間の合意があれば、賃貸人の地位はAに留保される。

 

③は正しい。賃貸人に地位を取得したCが建物の所有権移転登記を経なければ賃借人BはCからの賃料請求を拒むことができる(最判昭49.3.19)。

 

④は誤りで、正解。Bは賃借権の対抗要件を備えておらず、Bの承諾がなくてもAC間の合意によって賃貸人の地位がCに移転する。

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【問 29】

管理業法における賃貸住宅に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

1 賃貸住宅とは、賃貸借契約を締結し賃借することを目的とした、人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分をいう。

2 建築中の家屋は、竣工後に賃借人を募集する予定で、居住の用に供することが明らかな場合であっても、賃貸住宅に該当しない。

3 未入居の住宅は、賃貸借契約の締結が予定され、賃借することを目的とする場合、賃借人の募集前であっても、賃貸住宅に該当する。

4 マンションのように通常居住の用に供される一棟の家屋の一室について賃貸借契約を締結し、事務所としてのみ賃借されている場合、その一室は賃貸住宅に該当しない。

 

正 解

 

 

①は正しい。賃貸住宅管理業法2条1項本文の通りである。

 

②は誤りで、正解。建築中の家屋であっても、竣工後に賃借人を募集する予定で、居住の用に供することが明らかなときは、賃貸住宅に該当する(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方2条1項関係1(3))。

 

③は正しい。同解釈・運用の考え方2条1項関係1(3)により正しい。

 

④は正しい。同解釈・運用の考え方2条1項関係1(3)により正しい。

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【問 30】

管理業法における管理業務に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

1 管理業務には、賃貸住宅の居室及びその他の部分について、点検、清掃その他の維持を行い、及び必要な修繕を行うことが含まれる。

2 管理業務には、賃貸住宅の維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理を行う業務が含まれるが、当該契約は賃貸人が当事者となるものに限られる。

3 賃貸住宅に係る維持から修繕までを一貫して行う場合であっても、賃貸住宅の居室以外の部分のみについて行うときは、賃貸住宅の維持保全には該当しない。

4 管理業務には、賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務が含まれるが、維持保全と併せて行うものに限られる。

 

正 解

 

 

①は正しい。賃貸住宅管理業法2条2項1号の通りである。

 

②は誤りで、正解。賃貸人が当事者となるものに限られない。

 

③は正しい。賃貸住宅の維持保全は居室及び居室の使用と密接な関係にある住宅のその他の部分を対象とするものであり、居室以外の部分のみであれば維持保全には該当しない。(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方2条2項関係2)」

 

④は正しい。同法2条2項2号の通りである。

 

(『住宅新報』2021年11月30日号「21年度 賃貸不動産経営管理士試験 本紙 回答と解説」より)

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