21年度 賃貸不動産経営管理士試験 本社解答と解説 【問11~20】

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【問 11】

「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」(国土交通省住宅局平 成 13 年3月 23 日策定)において、新築される共同住宅に防犯上必要とされる 事項に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 エレベーターのかご内には、防犯カメラを設置するものとされている。

2 住戸の玄関扉について、ピッキングが困難な構造を有する錠の設置までは 不要とされている。

3 接地階に存する住戸の窓で、バルコニー等に面するもの以外のものは、面 格子の設置等の侵入防止に有効な措置を行うものとされている。

4 共用玄関の照明設備の照度は、その内側の床面においては概ね 50 ルクス以 上とされている。

 

正 解

 

 

①は適切。防犯上、エレベーターのかご内には防犯カメラを設置するとされている。

 

②は不適切で、正解。住戸の玄関扉は、破壊が困難な材質、こじ開け防止に有効な措置、破壊及びピッキングが困難な構造の錠の設置、補助錠の設置等が求められている。

 

③は適切。バルコニー等に面する住戸の窓のうち侵入が想定される階に存するものは、防犯建物部品等のサッシ及びガラスその他の建具を設置したものとする。(防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針4の3)。

 

④は適切。共用玄関は、50ルクス以上が、共用玄関以外の共用出入口は20ルクス以上の照度が求められている。

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【問 12】

住宅の居室に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

1 住宅の居室とは、人が長時間いる場所のことであり、居間や寝室等が該当し、便所は除かれる。

2 住宅の居室には、原則として、床面積の 20 分の1以上の換気に有効な開口部が必要である。

3 襖等常に解放できるもので間仕切られた2つの居室は、換気に関し、1室とみなすことはできない。

4 共同住宅では、その階における居室の床面積の合計が 100 平方メートル(耐火、準耐火構造の場合は 200 平方メートル)を超える場合は、避難するための直通階段を2つ以上設けなければならない。

 

正 解

 

 

①は正しい。「居室」は、で「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」(建築基準法2条4号)であり、居間や寝室等は含まれるが、便所は含まれない。

 

②は正しい。「居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない。」(建築基準法28条2項)。

 

③は誤りで、正解。「ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた二室は、」居室の採光及び換気については、「一室とみなす。」(建築基準法28条4項)。

 

④は正しい。建築基準法施行令121条。

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【問 13】

賃貸住宅の耐震改修方法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

1 木造において、基礎と土台、柱と梁を金物で緊結して補強する。

2 木造において、壁や開口部を構造パネルや筋かい等で補強する。

3 木造において、地震力を吸収する制震装置(ダンパー)を取り付けても効果がない。

4 鉄筋コンクリート造において、耐震壁や筋かいを増設する。

 

 

正 解

 

 

①は適切。木造(軽量鉄骨造)の場合、基礎と土台、柱と梁を金物で緊決して補強するなどして建物を堅固な「耐震構造」にすることが原則とされている。

 

②は適切。木造(軽量鉄骨造)の場合、既存壁を構造パネルなどで、開口部を筋交い等で補強するなどして建物を堅固な「耐震構造」にすることが原則とされている。

 

③は不適切で、正解。木造(軽量鉄骨造)の場合、建物に入った地震力を吸収する制振装置(ダンパー)を取り付ける耐震改修方法は、工事コストも安く済み、新築だけでなく改修方法としても向いている。

 

④は適切。鉄筋コンクリート造において、耐震壁や筋交い(鉄骨ブレース)を増設する方法は、耐震改修方法として有効とされている。

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【問 14】

修繕履歴情報に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

1 建物の履歴情報の利用によっては、建物の維持保全にかかる費用の無駄を省くことはできない。

2 賃貸借契約締結等の判断材料となり得る履歴情報が、賃貸借の意思決定時に適切に提供されることにより、入居後のトラブル防止にもつながる。

3 正確な履歴情報を利用することにより、災害が発生した際の復旧に迅速かつ適切な対応をとることが可能となる。

4 建物の履歴情報は、建物の所有者に帰属するものであるが、所有者から管理委託を受けている者が、必要に応じて利用に供することが考えられる。

 

 

正 解

 

 

①は不適切で、正解。建物の履歴情報を蓄積し利用することによって、建物の維持保全に係る費用の無駄を省くことができ、建物の長期にわたる維持管理コストを低減することができる。

 

②は適切。履歴情報は、賃貸借契約締結等の判断材料となり得るので、入居後のトラブル防止につながる。

 

③は適切。正確な履歴情報を利用することにより、災害が発生した際の復旧に迅速かつ適切な対応を行うことが可能となる。

 

④は適切。管理業者も建物の履歴情報を利用することにより、より正確で効率的な管理が実現できる。

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【問 15】

建物の維持保全に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 建築基準法第8条は、「建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」と規定しているが、これは建物管理者にも課せられた義務である。

2 集合賃貸住宅は、建築基準法第 12 条による定期調査・検査報告の対象とはならない。

3 建築基準法第 12 条により特定建築物において義務付けられる定期調査・検査報告は、建物の構造を対象とするものであり、敷地は対象とならない。

4 建築基準法第 12 条により特定建築物において義務付けられる定期調査・検査報告の対象には、昇降機は含まれない。

 

 

正 解

 

 

①は正しく、正解。建築基準法は、「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。」(同法8条1項)と規定している。

 

②は誤り。集合賃貸住宅のような共同住宅は、建築基準法12条による定期調査・報告が必要となる。

 

③は誤り。建築基準法12条は、建築物の敷地も定期調査・報告の対象としている。

 

④は誤り。昇降機も含まれる。

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【問 16】

屋上と外壁の管理に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 陸屋根では、土砂や落ち葉、ゴミ等が排水口をふさいでしまうと、屋上に雨水が溜まり、防水の性能に影響を与え、漏水の原因にもなる。

2 傾斜屋根(カラーベスト等)は、夏の温度上昇、冬の温度低下の繰り返しにより、素地自体の変形やゆがみ等を起こすことがあるが、雨漏れの要因とはならない。

3 コンクリート打ち放しの外壁は、鉄筋発錆に伴う爆裂を点検する必要はない。

4 タイル張り外壁の定期調査方法で、接着剤張り工法以外は、劣化等によりタイルが剥離するおそれがあるので、原則竣工後 10 年ごとに全面打診等の調査を行わなければならない。

 

 

正 解

 

 

①は正しく、正解。陸屋根では、風で運ばれた土砂、落ち葉やゴミが樋や排水溝をふさぐなどして屋上の防水面を破損するなどして漏水の原因となることがある。

 

②は誤り。傾斜屋根は、気温の上下によって素地自体が変形、ゆがみなどを起こし、割れや雨漏りなどの原因となる場合がある。

 

③は誤り。コンクリートの打ち放しの外壁は、コンクリート自体の塩害、中性化、凍害、鉄筋発錆に伴う爆裂等も点検する必要がある。

 

④は誤り。タイル張りの外壁の定期調査方法では、接着剤張り工法を含め、原則竣工後10年ごとに全面打診等の調査を行わなければならない。

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【問 17】

建物の修繕に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

1 建物は時間の経過とともに劣化するので、長期修繕計画を策定し、維持管理コストを試算することは有益である一方、その費用は不確定なことから賃貸経営の中に見込むことはできない。

2 長期修繕計画は、数年に一度は見直しを行うことにより、適切な実施時期を確定することが必要である。

3 長期修繕計画によって修繕費とその支払時期が明確になることから、将来に備えて計画的な資金の積立てが必要となる。

4 計画修繕を実施することで、住環境の性能が維持でき、入居率や家賃水準の確保につながり、賃貸不動産の安定的経営を実現できる。

 

 

正 解

 

 

①は不適切で、正解。建物の維持管理費用も賃貸経営の中に見込む必要がある。

 

②は適切。

 

③は適切。

 

④は適切。

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【問 18】

給水設備・給湯設備に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

1 水道直結方式のうち直結増圧方式は、水道本管から分岐して引き込んだ上水を増圧給水ポンプで各住居へ直接給水する方式である。

2 さや管ヘッダー方式は、台所と浴室等、同時に2か所以上で使用しても水量や水圧の変動が少ない。

3 受水槽の天井、底又は周壁は、建物の躯体と兼用することができる。

4 ガス給湯機に表示される号数は、1分間に現状の水温+25℃のお湯をどれだけの量(リットル)を出すことができるかを表した数値である。

 

 

 

正 解

 

 

 

①は適切。

 

②は適切。

 

③は不適切で、正解。受水槽の天井、底又は周壁は、建物の躯体と兼用せず、六面点検が可能であることが義務づけられている(1975年建設省告示1597号第1の2号、2010年国土交通省告示243号)。

 

④は適切。

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【問 19】

換気設備に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

1 自然換気は、室内と室外の温度差による対流や風圧等の自然条件を利用した方式である。

2 給気・排気ともに機械換気とする方式は、機械室、電気室等に採用される。

3 給気のみ機械換気とする方式は、室内が負圧になるため、他の部屋へ汚染空気が入らない。

4 新築建物は、ごく一部の例外を除いて、シックハウスの原因となる揮発性有機化合物の除去対策として 24 時間稼働する機械換気設備の設置が義務づけられている。

 

 

 正 解

 

 

①は正しい。

 

②は正しい。

 

③は誤りで、正解。換気方式として給気のみ機械換気の場合であっても排気口は設置する必要があり室内が負圧とはならない(建築基準法施行令129条の2の6第2項)。

 

④は正しい。建築基準法施行令20条の8により義務づけられている。

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【問 20】

敷金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

 

1 貸主は、建物明渡し後でなければ、敷金を未払賃料に充当することができない。

2 敷金は、賃貸借契約上の債務を担保するための金銭であるから、貸主との合意があっても賃貸借契約の締結後に預け入れることができない。

3 貸主が建物を借主に引き渡した後、第三者に当該建物を売却し、所有権移転登記を完了した場合、特段の事情がない限り、敷金に関する権利義務は当然に当該第三者に承継される。

4 賃貸借契約が終了し、建物が明け渡された後、借主が行方不明となったことにより、借主に対し敷金の充当の通知ができない場合、貸主は敷金を未払賃料や原状回復費用に充当することができない。

 

正 解

 

 

①は不適切。貸主は、建物明渡し前でも敷金を未払賃料に充当可能である。

 

②は不適切。貸主と借主とで敷金預け入れ時期に関する合意があれば、賃貸借契約締結後に敷金を預け入れることも可能である。

 

③は適切で、正解。

 

④は不適切。判例では貸主は敷金充当の意思表示を要しないと解されており、借主が行方不明で通知ができない場合であっても貸主は敷金充当が可能である(大判昭10. 2.12)。

 

(『住宅新報』2021年11月30日号「21年度 賃貸不動産経営管理士試験 本紙 回答と解説」より)

 

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