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脱炭素、家庭部門が鍵

2022.1.11|業界の知識を深める

  • 脱炭素化
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気候変動にも照準 住宅各社の事業戦略で

国内におけるエネルギー起源二酸化炭素排出量は、各部門での取り組みにより年々減少しているが、地球温暖化の動きはなかなか止まらない。気温上昇を2度抑えるという「パリ協定」の目標を達成するためには、企業・事務所部門だけでなく、家庭部門についても二酸化炭素の排出を抑える取り組みが必要だ。そこで大きな役割を担うのは、家庭を支える住宅ではないだろうか。政府も、省庁の垣根を越えた取り組みを開始した。(ライター・玉城麻子)

官民一体で対応を

30年46%削減目標

16年に発効した「パリ協定」では、気温上昇を2度に抑え、そのために1・5度に抑える努力を継続することで合意した。その後、18年10月のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)特別報告書では、気温上昇が1・5度を超えないようにするためには、50年前後に世界の二酸化炭素排出量が正味ゼロになっていることが必要との見解を示している。

パリ協定発効後、欧米を中心に温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けた目標を設定し、経済・産業構造を転換させる環境対策に取り組み始めている。日本でも、50年に100%削減する「カーボンニュートラル」(GHG排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計がゼロ)を目指すことを明言。その中期目標として、30年度に従来の13年度比26%削減としていた目標を7割以上引き上げ、46%削減を目指すとし、更に50%削減に向けて挑戦していくことを表明した。

家庭部門のシェアは15%

19年度のエネルギー起源二酸化炭素排出量は前年度比3・4%減の10・3億㌧と6年連続で減少し、13年度比では16・7%減少した。部門別のシェアをみると、「企業・事業所他部門」が56・1%と半数超、「家庭部門」は15・5%、「運輸部門」は20・0%と、全体でみると家庭部門の二酸化炭素排出量はそう多くはない。しかし、50年にカーボンニュートラルを実現するためには、企業だけでなく、家庭部門、つまり消費者個人の取り組みも推進していかないと、厳しい状況になっている。

50年の目指すべき姿

こういった状況を受け、国土交通省と経済産業省、環境省は今年4月、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を設置し、50年に目指すべき住宅・建築物の姿や取り組みの考え方、推進方法などについて検討し、8月23日にとりまとめを公表した。

取り組みの基本となる考え方は、省エネ性能の確保・向上による省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーの導入拡大とし、「50年に目指すべき住宅・建築物の姿」として、①省エネについては、ストック平均でZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)基準の水準の省エネ性能の確保(住宅は一次エネルギー消費量を省エネ基準から20%程度削減、建築物は用途に応じて30%または40%程度削減されている状態)②再エネは、導入が合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備等の再生可能エネルギー導入を一般的にする、とした。その上で、30年に目指すのは新築住宅・建築物はZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能(住宅は強化外皮基準と再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量を現行省エネ基準値から20%削減。建築物は用途に応じ、30%または40%程度削減、小規模は20%削減)を確保し、新築戸建住宅の6割で太陽光発電設備を導入する――状況を目指す。

住宅の脱炭素への取り組みは、さまざまな施策が講じられてきた。ただ、建物自体は国土交通省が、建材・設備などは経済産業省、環境政策全般は環境省と、各省が取り組んでいた。

今回は、国土交通省や経済産業省、環境省と関連省庁が役割分担(実施主体)を示し、連携して取り組む体制を示したことが大きな特徴だ。更に、国民・事業者の意識変革・行動変容が必要として、個々の取り組みを重視する考え方を示した。環境省・経済産業省が中心となり、地球温暖化対策としての省エネ対策や、再生可能エネルギー・脱炭素電力の活用等の必要性や効果、負担とメリット、何をする必要があるかについて周知活動を行う。省エネ性能の高い住宅を使いこなす住まい方の周知・普及、行動経済学(ナッジ)の手法を活用した情報提供なども行っていくとしている。

自然災害の激甚化・頻発化により、以前に比べて防災意識が高まっていることから、太陽光発電設備の導入や蓄電池設備の設置などは比較的納得感が得られる部分だろう。ただ、導入費用と予算の兼ね合いもあることから、漠然とした省エネ対策では導入を後押しすることは難しい。補助・助成制度に加えて、実効性の高い施策が必要だ。

新築時にフルスペックでも、経年点検や設備更新は不可欠であり、年齢とともに住まい方も変化することから、住宅本体も段階的な性能確認や設備の追加導入などが必要になる。居住者自身が、住宅を「育てる」という視点を持つことが、結果として環境配慮・脱炭素につながっていくのではないだろうか。

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宅建士の役割も重大に

省エネ、緑化の推進も

国土交通分野については、まちづくりやインフラ、交通・運輸、住宅・建築物など多岐にわたる上、国内の二酸化炭素排出量に占める割合は約5割を占めている。国土交通省では7月、前述の検討会のとりまとめに先立ち、さまざまな革新的技術開発や社会システムを含めた政策的なイノベーションを促進しながら、同分野の環境関連施策・プロジェクトを推進していくため、「国土交通グリーンチャレンジ」をとりまとめた。

同プロジェクトでは、脱炭素・気候変動適応・自然共生・循環型――の社会を目指し、分野横断・官民連携の視点から、①省エネ・再エネ拡大等につながるスマートで強靱なくらしとまちづくり、②グリーンインフラを活用した自然共生地域づくり、③自動車の電動化に対応した交通・物流・インフラシステムの構築、④デジタルとグリーンによる持続可能な交通・物流サービスの展開、⑤港湾・海事分野におけるカーボンニュートラルの実現、グリーン化の推進、⑥インフラのライフサイクル全体でのカーボンニュートラル、循環型社会の実現、の6つの重点プロジェクトを掲げた。

このうち、「省エネ・再エネ拡大等につながるスマートで強靭なくらしとまちづくり」では、今年4月に全面施行となった改正建築物省エネ法の適切な運用や、LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅・建築物やZEH・ZEBの普及促進、既存住宅・建築物の省エネ改修の促進、木造建築物の普及拡大など、住宅・建築物のさらなる省エネ対策の強化が求められている。

不動産業者に求められる専門家としての役割も大きい。20年7月に宅建業法施行規則の一部が改正され(同年8月28日施行)、不動産取引時に洪水や内水、高潮など水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を事前に説明することが義務付けられたことから「防災・減災のためのすまい方や土地利用の促進」に欠かせない位置付けだ。

さらに、「脱炭素と気候変動適応策に配慮したまちづくりへの転換」では、コンパクトシティのような地域全体における取り組みだけでなく、商店街でのイベントや空き店舗を利用したまちの人が集えるスペースの創出といった「居心地がよく歩きたくなる空間形成」や、「グリーンファイナンスを通じた地域価値の向上」として、低未利用土地やまちなかの老朽ストックを活用したにぎわい再生に取り組む際の、民間資金調達における支援業務などにも期待が寄せられている。

『住宅新報』2021年9月21日号「住まいの環境特集」より)

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