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住まいは新生活様式のインキュベーター ~その3~

2021.4.26|業界の知識を深める

  • 新たな日常
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ポストコロナの住まい方

感染症にはエンデミック、エピデミック、パンデミックという三つの段階があります。エンデミックは予測可能ですが、エピデミックは予測困難で、エピデミックの規模が大きくなった状況をアウトブレイクと呼び、エピデミックが世界的に複数の地域で発生することをパンデミックと呼びます。今回のCOVID-19はまさしくパンデミックですが、幸いにして突然変異によるウィルスの凶暴化は起きませんでした。しかし、この経験は経済的にも文化的にも大きな影響があり、現在もCOVID-19は進行中ですが収束後には大きなライフスタイルの変更を迫られると考えられます。こうした時代に、住宅のスタイルも今までの「食う寝るところ」から「生きるための場所」への意識改革が求められます。ポストコロナの住まい方を事例を中心にご紹介します。(建築家・中村義平二)

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スタジオハウス

リビングを寛ぎの場としてだけではなく、スタジオ機能を組み込んで、ビビッドに活用するのがスタジオハウス(図5)です。日頃の運動や娯楽に加え、外出がしにくくなったり、気候不順で雨が続くような時にも活躍します。組み込む機能はシアターとアスレチックです。

まず、アスレチックですが、筋トレ(ホームジム)用のマシンは外国製の高価なものでなくても、一定の効果があります。むしろ、毎日続けることの方が重要ですが、リビングと一体化であれば構えることなく気軽にトレーニングができます。付属施設としては運動後の汗を流す独立したシャワーブースとタオルを収納するリネンクローゼットです。また、サイクリスト向けにはZwiftの設置をお勧めします。Zwiftは3Dグラフィックで構築されたリアルなサイクリングコースを、世界中のユーザーと一緒に好きなだけ走ることができる、一種のオンラインRPG的なアトラクションを組み込んだトレーナーです。

これらの設置を行う場合には床の強化や換気性能のアップが必要です。床についてはコンクリートがベストですが、そのまま直に仕上げ材を貼ると、固すぎて足首や膝を痛めることがあるので、必ず根太を流し、根太と捨て床(下地の合板)の間には硬質ゴムシートを挿入します。こうすることで床の弾力性が確保できます。また、換気については吸排気それぞれの側に換気扇を備えた第一種換気にして、強制的な換気能力を上げます。床の仕上げ材については汗染みや摩擦傷の発生しにくい無垢フローリングや樹脂系の床材を選ぶようにします。

図5の例では、LDKにアスレチックスタジオがビルトインされています。専用シャワールームと左ゾーンにはリネンクローゼットが用意され、大型食品庫が隣接しています。南面開口部は折戸式のサッシを使い全開口とし、北側にも大きな開口を設け、自然通風も考えられています。また、南側には屋外でのストレッチやヨガなどができるアスレチックガーデンとし、子供用の鉄棒、雲梯などの設置も可能です。

スタジオハウスのもう一つの姿はホームシアターです。 ホームシアターを楽しむには50インチ以上の大型画面を持つTVかプロジェクター、音響装置が必要です。TVかプロジェクターは予算次第ですが、最近は明るい場所でも鮮明な画像を投影できるプロジェクターも発売されています。音響については、建物の遮音性との兼ね合いになりますが、遮音性に問題がある場合には、高性能ヘッドフォンやネックスピーカーなどを使えば、大音響や振動もリアルに再現されます。映画、音楽、ゲームなどの再生に大画面とドルビーサウンドは一度ハマると抜け出せなくなるほどの魅力があるようです。

最近はZoomやSlackを使ったWeb会議が盛んに行われ、通信回線の確保が悩ましいところです。Web会議など行うとスマホのデータ通信容量など、あっという間に吹き飛んでしまい、どうしても光回線が必要になります。また、宅内の隅々までWi―Fiを飛ばすには中継機能付きのルーターが必要になります。中継機に頼らない場合はLANケーブルの敷設が必要です。今後起きうる災害や感染症の流行に対応するためには、住まいのスタイルに関係なく通信回線の確保が重要です。通信系はガス、水道と同じか、それ以上の重要性を持ちはじめています。