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脱炭素化で住宅の資産価値維持へ

2021.11.28|業界の知識を深める

  • 脱炭素化
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住宅メーカー各社は、脱炭素化の実現を目指すと共に、より多角的な取り組みを展開することで、レジリエンス機能の強化や住宅の資産価値の維持といった、社会課題の複合的な解決に向け、付加価値を訴求してきた。(フリーライター小山田湊)


社会課題へ複合的な対応 レジリエンスや持続可能性を訴求

事業活動での消費電力を100%再生可能エネルギー(再エネ)で賄う目標を掲げた国際イニシアティブ「RE100」には、既に国内の住宅供給事業者11社が加盟している。直近では、昨年8月に積水化学工業が加盟し、購入電力の完全再エネ化は2030年度に、事業活動に使用する全エネルギーの温室効果ガス排出ゼロは2050年度に達成時期を定めた。

大手住宅メーカーの場合、顧客サービスの一環である独自の余剰電力買い取り制度が〝事業電力の再エネ化〟を後押しするスキームを構築している。積水化学工業も、太陽光発電システム(PV)を搭載した顧客向けの余剰電力買い取り制度「スマートハイムでんき」の活用を念頭に、目標達成を目指す方針だ。


施工から引渡し後も 再エネでまちづくり

大和ハウス工業は、まちづくりでの脱炭素化に取り組んだ。今年3月に完成した、千葉県船橋市の大規模複合開発事業「船橋グランオアシス」(住戸総戸数861戸)では、施工時の工事用電源、戸建分譲住宅や分譲マンション、賃貸住宅の入居者が利用する電気や共用部、街灯などで使う電力を、「菅沼水力発電所」(岐阜県飛騨市)で発電した電力を中心に、同社グループが管理・運営する全国394カ所の再エネ発電所から供給している。

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AGCテクノグラスの工場跡地5万7456.19㎡に分譲マンション・賃貸住宅・戸建分譲住宅と複合商業施設などを開発した「船橋グランオアシス」

街区内の分譲マンション「プレミスト船橋塚田」(総戸数571戸)には、使用電力が増加する時間帯に、蓄電した電力を共用部で使用するピークカットを自動的に実施し、停電時には蓄電池から特定の機器に電気を供給する仕組みを導入。戸建分譲住宅「セキュレア船橋グランオアシス」(全26戸)には、住宅間での電力融通に、AIを活用した設備機器の制御システムを採用した。


賃貸ZEHニーズ増 集合住宅への展開も

コロナ禍で在宅勤務が常態化する中、光熱費の抑制につながるZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)のニーズは増しているといえそうだ。大手住宅メーカーがけん引するZEHの展開は、次のフェーズに入り始めている。昨年度の新築戸建住宅でのZEH比率が91%だった積水ハウスは、賃貸ZEHでも年間受注戸数2976戸と、22年度までの中期経営計画で目標に掲げた2500戸を前倒しで達成した。今後は、分譲マンションも含め、共同住宅のZEH化を進める方針だ。

ZEHを上回る先進的な環境性能住宅として注目されているのが、生活上にとどまらず、建設から解体までのCO2排出を抑えつつ再エネを創出し、建設時のCO2排出量も含めトータルでCO2の収支をマイナスにするLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅だ。


LCCMとの両輪は 可変性ある空間提案

ミサワホームは先月、2030年の暮らしを想定した、次世代型戸建住宅の実証実験棟「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」を建設した。①暮らし、②健康、③環境の3つのテーマで持続可能性を訴求した提案を多方面から盛り込んだ同モデルは、28年間使用することでLCCMの実現を想定。2世帯住宅や賃貸併用、貸店舗、シェアオフィスといった、住宅にとどまらない可変性を実現する空間構成を1階部分に採用することで、収益化も視野に入れるなど、ソフト面からの〝建物の持続可能性〟を訴求している。

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ミサワホームの体験型施設「ミサワパーク東京」(東京都杉並区)内の「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」は、フレキシブルな空間設計が可能な1階をパブリックスペースに位置付け、シェアオフィスとした

『住宅新報』2021年8月3・10日号より)

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