記事

準備をする

二酸化炭素を吸着〝木造都市〟機運高まる 

NEW 2021.11.22|業界の知識を深める

  • 脱炭素化
記事イメージ

写真:準耐火構造のカフェ(東京都豊島区)。木ブレースは3次元加工を施し、室内には曲線を用いた木の本棚も

大規模木造建築物の普及は脱炭素社会を実現するための要素の1つとなる。炭素を固定・貯蔵する特性があり、再生可能な木材を積極的に活用することは、化石燃料の使用量を抑え、二酸化炭素排出削減に寄与するからだ。折しも、今年6月には、脱炭素社会の実現を目的に「公共建築物等木材利用促進法(木促法)」が改正され、公共建築物だけでなく民間の建築物にも積極的に木材を活用する方向性が打ち出された。木造ビルを建築するための耐火部材や技術開発も進む。今、都市の木造化機運が高まっている。


「木促法」改正 木材利用促進、一般建築に拡大

「地球環境にやさしい木造耐火建築が、大きなシェアを占める時代が来ると確信している。心豊かに生きることができる木造都市をつくる。木の文化の国である日本から世界へ、未来の都市の姿を示したい」

中高層・大規模耐火木造建築の普及を目指す日本木造耐火建築協会の木村一義会長は、7月下旬に開催したオンラインセミナー「先駆的事例で学ぶ木材利用セミナー~カーボンニュートラルな木造都市を目指す」でこのように話した。


木造11階建て建築中

現在、都市の建築物といえば鉄骨やコンクリート造ばかりだ。木村会長は「これまでは木造耐火技術がなかったこと、そして法律の規制があり、建築できなかったのか原因」と分析した上で、「現在は国内で構造部材に木材を使った11階建てビルが建設中で、また地域材を使った純木造7階建てビルも完成している。建築の歴史に残るものだ」と、木造耐火技術の開発など状況が大きく変わっていることを指摘した。

この6月には、10年に成立した「公共建築物等木材利用促進法(木促法)」が、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材利用の促進に関する法律」として改正された。50年のカーボンニュートラル社会の実現を目指し、公共建築物だけでなく民間の建築物にも積極的に木材を活用し、森林の適正な整備や木材自給率の向上を後押しするものだ。

同セミナーの中で、林野庁林政部木材利用課建築物木材利用促進官の小木曽純子氏はこれまでの10年を振り返り、「木促法施行以降、公共建築物の木造化率は緩やかではあるが上昇傾向で推移している。特に積極的に木造化を促進することとされている低層(3階建て以下)の公共建築物では10年度に17・9%だった木造化が、19年度には28・5%まで上昇した」と説明。

制度面ではCLT(直交集成板)に関するJASの制定や木造校舎の構造設計標準の改正、3階建て学校等について一定の防火措置を講じた場合に準防火構造での建築を可能とする建築基準法の一部改正なども行われ、更に都市の木造化を推進する議員連盟や企業らによる木造推進協議会、林野庁では民間建築物に木材利用を促進する懇談会(通称、ウッド・チェンジ・ネットワーク)が発足しているという。


「脱炭素」を明示

小木曽氏は「環境整備による機運の高まり、そしてカーボンニュートラルへの貢献など更に木材利用の重要性が増す中で今回、木促法が改正された」とし、そのポイントとして「法律の目的に『脱炭素社会の実現に資すること』を明示」「基本方針の対象を公共建築物から建築物一般に拡大」「木材利用促進協定制度の創設」などを挙げた。


地域貢献にも

また、木構造メーカーであるシェルターの安達広幸常務取締役は、防耐火や地域産材活用についての注意点について解説。木造建築物が担える役割として、環境貢献と地域貢献を挙げ、「環境貢献は木造だけが担えるわけではないが、環境課題を後世に残さないためにも木材利用で貢献していきたい」「経済波及効果があるので地域貢献は大いにできる」と説明した。そして、中高層の木造ビルが都市に多く建設されるためには「木の使い方を、森林・林業・建設の3者で一緒に考えることが重要である」と述べた。