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新築住宅の省エネ義務化は25年度

2021.11.16|業界の知識を深める

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  • 脱炭素化
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3省合同「省エネ」あり方検討会が最終局面

国では、住宅・建築物の省エネ対策を議論する有識者検討会が大詰めを迎えている。これまで5回の検討を重ね、2025年までに新築住宅における省エネ基準の適合義務化などを掲げる。他方、太陽光発電パネルの設置義務化をめぐる方向性などの議論 が不十分との異論も相次ぎ、とりまとめが延期された。業界の理解と消費者の利益保護をにらみ、高い視座を持った施策が求められている。


「脱炭素」実現へ問われる覚悟

国土交通省、環境省、経済産業省の3省合同による「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」(座長・田辺新一早稲田大学創造理工学部建築学科教授)は今年4月19日、初会合を開催した。「2050年カーボンニュートラル」の実現へ向け、住宅・建築物におけるハード、ソフト両面の取り組みと施策の方向性を定めるもの。委員は、行政や建築、法律、報道、消費者保護など様々な立場の有識者で構成。住宅・建築物分野での脱炭素化を図るべく、省庁間の垣根を越えて取り組むものとして注目を 集めた。

これまでに住宅・不動産団体へのヒアリングが行われ、断熱化を進める上での消費者メリットの創出や簡素な制度設計などが課題として指摘された。更に、省エネ基準引き上げの必要性や、再エネ導入の拡大などの観点からも検討。特に太陽光発電パネルの設置義務化には慎重な意見も多かったが、2030年度までにCO2排出量を13年度比で46%削減するという大目標を達成するためには、大胆な取り組みの方向性を示すべきという指摘がされていた。

7月20日に開かれた第5回会合では、今後の省エネ対策等の「あり方・進め方案」が示された。第4回で検討した素案を修正した同案では、「国や地方自治体等の公的機関による率先した取り組みと、積極的な自治体に対する取り組み支援」や「中期的に目指すべき姿して、30年における新築の住宅・建築物については平均でZEH・ZEBの実現を目指すこと」などを記述。省エネ性能を高めるための様々な取り組みのほか、太陽光発電や太陽熱・地中熱の利用、バイオマスの活用など地域の実情に応じた再生可能エネルギーや未利用エネルギー利用拡大を図る重要性が盛り込まれた。また、国土交通省からは今後の大枠のスケジュール案が提示され、新築住宅において省エネ基準の適合を義務づける時期を2025年度とする案が示された。

委員からは「おおむね賛成」など評価する意見の一方、「現状で対応できる範囲にとどまり、13年度比で46%削減という野心的目標には到底届かない」や「2050年のあるべき姿を明確に記すべき」と、より踏み込んだ記述を求める意見が相次いだ。中には「太陽光発電パネルの設置義務化を含めた道筋が示されず、要請の半分にしか応えていない」など厳しい声もあり、今回のとりまとめは延期となった。


「グリーンチャレンジ」始動

30年度までの重点施策、法改正も視野 国交省

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そんな中、国交省は、7月6日、国土・都市・地域空間におけるグリーン社会の実現に向けて戦略的に取り組むため「国土交通グリーンチャレンジ」を公表した。「2050年カーボンニュートラル」や気候危機への対応など、分野横断・官民連携の視点から取り組みを推進。とりわけ30年度までの10年間に重点的に取り組む6つの重点プロジェクト(上図参照)を掲げる。

中でもエネルギー消費ベースで日本国のCO2排出量の約3割を占める民生部門等における省エネ、再エネ利用等を推進するため、住宅・建築物の省エネ対策を強化する。

これらの着実な実行を図るため、赤羽一嘉国土交通大臣は全省的な実行体制として、赤羽大臣自らがかじ取りを担う「国土交通省グリーン社会実現推進本部」を7月19日に設置した。同日、第1回会合を開いた赤羽大臣は、カーボンニュートラルの実現は欧米を含む国際社会では〝当然の取り組み〟となっている点を強調し、「今後の本省の施策の基礎にカーボンニュートラルの考え方を置き、社会システムの変革を目指すことが重要。次年度の概算要求をはじめ、税制改正要望に盛り込んでほしい」と発言。今後は法改正も含めた制度面の検討も本格化させる意向を示した。

住宅・不動産業界および消費者の理解・協力を得ながら、成熟した社会へ向けた道筋を示せるか。「脱炭素」というチャレンジングな目標の実現に向け、施策の覚悟が問われる正念場を迎えている。


6地域7港湾、CNP形成を推進

港湾機能の高度化で脱炭素へ

国土交通省がまとめたグリーン社会の実現に向けた重点プロジェクト「国土交通グリーンチャレンジ」の中で掲げられたカーボンニュートラルポート(CNP)。発電、鉄鋼、化学工業などの多くが立地する港湾・臨海部の整備は、温室効果ガスの排出を全体でゼロにするカー ボンニュートラルにとってポイントになる。プロジェクトでは6地域7港湾を対象に、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化等を通じてCNPの形成が進められる。

政府は昨年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い、今年4月には30年度に13年度比で温室効果ガ スを46%削減する目標を表明している。プロジェクト「港湾・海事分野におけるカーボンニュートラルの実現、グリーン化の推進」は「国土交通グリーンチャレンジ」で掲げられた6つのプロジェクトのうちの一つだ。

港湾・臨海部には日本のCO2排出量の約6割を占める発電、鉄鋼、化学工業等の多くの産業が立地しており、港湾機能の高度化で脱炭素化を図る必要性がある。また、港湾・臨海部、その後背地の都市部に、水素等の次世代エネルギーの利活用が波及することも期待される。

港湾海事分野の取り組みでは、船舶の脱炭素化、気候リスクへの対応、生体系保全・活用、循環型社会の形成と共に、CNPの形成を進める。対象地域は6 地域7 港湾(マップ参照)となる。