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『不動産・困ったときの知恵袋』〔第1回〕売主から媒介契約解除の申し出が!

2021.10.15|業務のプロになる

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〈不動産取引に関するお役立ち情報コーナー〉

売主から媒介契約解除の申し出が!それまでかかった広告費を請求できますか?


困りごとの内容

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不動産の売買や賃貸借の「一般媒介契約」においては、依頼者との間で広告出稿の問題でトラブルが発生するケースがあります。

そういったトラブルが原因で結果として媒介契約の解除ということになったときに、それが依頼者からの一方的な解除であったような場合には、媒介業者としてはそれまでにかかった広告費などの損害賠償請求をしたいと思うことがあります。

例えば、依頼者が「依頼物件の単独広告が少ない」「広告の仕方が悪い」「営業の仕方が悪い」などということを理由に依頼者の意見を聞かないなどと言い出し、それを媒介契約約款で定めている「信義誠実義務違反」だと主張してくるような場合です(専属専任16条1号、専任17条1号、一般18条1号)


このような場合に、媒介契約を一方的に解除した依頼者に対し、媒介業者がそれまでにかけた広告費を請求することはできるのでしょうか。


解決のための知恵

本件のような事案については、その依頼者が主張する理由が「信義誠実義務」に違反するものであるかどうかを慎重に見極める必要があります。

しかし、その依頼者の主張しているような事実が多少はあったとしても、そこに至るまでの過程で、本件の媒介契約における価格査定や媒介価額(売出し価額)の設定において、依頼者との間の意見の相違が大きければ大きいほど、媒介業者が出費する広告費や営業活動が減少するということを知っておく必要があります。

なぜならば、その売出し価額が市場価額を大きく上回っている場合には、そもそも広告する意味がほとんどなく費用の無駄使いになるだけですから、媒介業者が広告出稿を控えたからといって、それが直ちに信義誠実義務に違反することにはなりません。

そのほかにも信義にもとるような行為があったとか、顧客との価格交渉がうまくいかなかったのは商談の仕方が悪いからだなどと言いがかりをつけ、その結果「成約ができなかったのは自分の言うことを聞かなかったから」だなどと言い出すわけです。

したがって、本件の事実関係においてそのような事実が背景にある場合には、広告費の全額請求ができるかどうかは別にして、それ相応の損害賠償請求は可能だと考えられます。

媒介契約の解除には不利益を被る者への配慮が必要

それでは、このように媒介契約が一方的に解除された場合に、その相手方である媒介業者が依頼者に対して賠償請求ができるという法的根拠はどこにあるのでしょうか。
またそれは、宅建業のように、成功報酬として報酬を受領することを条件に媒介する場合にもいえることなのでしょうか。

この2つの疑問は、いずれもこれから申し上げる民法の規定によって解決することができます。

媒介契約というものが法的には委任の規定を準用する「準委任契約」(民法643条、656条)であることから、契約の各当事者はいつでも媒介契約を解除(民法651条)することができます。

準委任契約の解除にあたっては
「やむを得ない事由」によって解除する場合を除き(同条②本文ただし書)
①相手方に不利な時期に委任を解除したとき(同条②1号)
②委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除したとき(同条②2号)

この場合解除権者は、相手方の損害を賠償しなければならないと民法が定めています(民法651条②)

そして、その同条②本文ただし書の「やむを得ない事由」という規定の趣旨が、まさに媒介業者に「信義誠実義務違反」があって解除するような場合のことをいい、更にその同条②2号のカッコ書に定められている「専ら報酬を得ることによるものを除く」という規定の趣旨が、従来からの判例理論を明文化したもので、「受任者が委任によって報酬以外の利益を得る場合を除く」という意味になります(最判昭和58年9月20日、昭和43年9月3日)

媒介業者が依頼者との間で媒介報酬を受領する特約をしていたとしても、カッコ書の規定には抵触しません。

したがって媒介契約が依頼者によって一方的に解除された場合には、「損害の賠償を請求することができる」ということになるのです。 ちなみに、解除権者が契約を解除したときに「相手方に対し損害賠償請求をすることができる」という規定があります(民法545条④)


この規定は解除する方に解除する権利があり、解除される方に解除されてもやむを得ない事情(債務不履行など)がある場合の規定ですから、誤解がないように注意する必要があります。


このような内容は宅地建物取引士の試験で問われます。

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