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コロナ禍も投資家の意欲衰えず

2021.9.28|業界の知識を深める

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将来不安で初心者が増加

主に個人投資家がプレーヤーとなっている投資用の不動産では、価格の上昇と表面利回りの下落という動きがこの数年続いている。一方、コロナ禍においても投資意欲は衰えず、また将来への不安や他の投資商品と比べて安定しているということから、新規参入も増えている状況だ。(ライター 玉城麻子)

『住宅新報』2021年9月21日号「21年上半期の不動産流通市場特集」より)

区分マンション価格上昇続く

21年上半期(1~6月)における区分マンション、一棟アパートの登録動向をみると、いずれも価格は上昇し、表面利回りが下がる傾向がみえている。

不動産投資サイト「健美家」(運営会社・健美家)がまとめている収益物件市場動向をみると、区分マンションでは、20年第3四半期(7~9月)を機に価格は上昇、利回りは下落に転じた。21年第2四半期(4~6月)には、価格は前期比4・6%増の1571万円、利回りは同0・26ポイント下落の7・39%と、いずれもコロナ前の水準となっている。(図1)

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図1

また、一棟アパートについては、価格は20年第1四半期(1~3月)に若干下がったが、それ以降は上昇しており、21年第2四半期には同3・7%増の7010万円と、7000万円台を超えた。一方、利回りについては、コロナ前から緩やかに下落が続いており、21年第2四半期は同0・13ポイント下落の8・53%だった。(図2)

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図2

これは、健美家と同じ不動産サイト「楽待」(運営会社・ファーストロジック)でもおおよそ同じ傾向だ。21年第2四半期の区分マンションの価格は、1771万円と5四半期連続で上昇し、表面利回りは6・76%と5期連続で下落。集計を開始した12年から過去最高額、過去最低利回りを記録しており、第3四半期も1700万円台で推移すると見込まれる。

一棟アパートについては今年に入り価格が上昇し、21年第2四半期は6956万円と12四半期ぶりに7000万円近い価格となった。高価格帯の物件が多数掲載されたことが影響したとしているが、7月以降は若干下がる傾向にあるが、高い価格帯で推移する可能性が高い。


投資意欲は安定的

コロナウイルス禍の拡大が始まった20年2月以降、取り巻く環境は大きく変化したが、不動産投資に関する意識はある意味安定している。

健美家の「第15回不動産投資に関する意識調査」(21年4~5月実施)によると、1年前と比べた価格面では、「価格が上昇している」との回答は前回調査(20年10月)と比べて29・4ポイント増の52・8%となったが(図3)、20年10月以降に「物件を購入した」との回答は35・3%と前回調査(35・0%)から微増で、コロナ禍でも購入している状況が示されている。(図4)購入物件は一棟アパートが37・2%(前年調査=20年4月は40・6%)、区分マンションは34・2%(同20・3%)、戸建賃貸27・6%(24・8%)、一棟マンション9・0%(同13・9%)で、区分マンションが前年調査比13・9ポイント増と大きく増加した。(図5)

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図3

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図4

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図5

また、投資用不動産の市況についての問いに対して、「売り時」との回答は前年調査時より18・5ポイント増の27・5%で、その理由は「投資家の需要がある」が51・6%を占めた。一方、「どちらともいえない」の回答は51・2%と前年調査比で12・8ポイント減少したが、「物件次第」との回答が7割以上を占めており、いい物件やほしい物件があれば購入するという、通常と変わらない姿勢が示された。これは、ファーストロジックが今年1月に実施した意識調査でも、55%がコロナ禍でも「不動産を買い進めたい」と回答。「様子を見てから判断したい」(39%)も多いとはいえ、全体としては、慎重な中にも機会があれば投資を検討するという、潜在的な意欲が表れている。(図6)

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図6

全体の傾向としては、「いい物件があれば買う」という意識にさほど変化はなく、コロナ禍であっても不動産は安定した投資先だという認識があることがうかがえる。


コロナを機に興味

東京五輪・パラリンピック後、マンションなど価格下落が起こると予想されていたが、現段階ではそういった動きは見えず、当面は価格上昇の傾向が続くと想定される。価格以外では、地域についての動きが指摘されている。

コロナ禍で在宅勤務やテレワークが導入されたことで、勤務地・主要路線よりも広さ・防音性といった住環境を意識するようになってきたため、都市部近郊で物件を探す動きが増えている。20年の人口移動の状況(住民基本台帳人口移動報告)をみると、東京都のみが前年と比べて転出者増・転入者減だった。テレワークの定着率にもよるが、今後はこういった働き方の変化による影響がありそうだ。

一方、不動産投資をしよう、してみたいと考える若年層が増えてきており、健美家でも登録者層に20代が増えているという。まずは戸建賃貸から始め、都内の中古区分マンションの取得に動く流れが多い中、この1年においては区分マンションの動きが目立つようになっている。

また、ファーストロジックが今年2月に開始した新サービス「楽待不動産投資相談室」には、現在までに1千件以上の質問が寄せられた。年齢層は幅広いようだが、中でも「不動産投資のはじめ方」についての質問が多く、コロナをきっかけに不動産投資を始めようと考える初心者が増えているという。実際に、同社サイト「楽街」の会員で物件を所有している割合は、以前は6~7割だったが現在は45%前後で、所有していない会員が55%前後と、新規参入が増加している。近年、経済的自立を実現し早期に退職するという「FIRE」の考え方が出てきているが、それに加え、コロナを機に将来に不安を感じていることが不動産投資を検討する動機に結びついている可能性も高いようだ。

『住宅新報』2021年9月21日号「21年上半期の不動産流通市場特集」より)

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