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賃貸管理を巡る法体制が進展、課題解決に大きく前進 ~その1~

2021.9.3|業界の知識を深める

  • 賃貸管理
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賃貸不動産経営管理士は国家資格に

改正民法の施行から1年余りが経ち、6月15日には、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)」における受託管理方式・賃貸住宅管理業者の登録に関する条項が施行された。事業者の登録制度が創設されるなど、賃貸管理業を巡る法体制の明確化が進む中、コロナ禍で生活様式が一変、アパートやマンションなど賃貸住宅を取り巻く環境にも、影響が及んでいるようだ。(フリーライター小山田湊)

賃貸住宅管理業法

管理戸数200戸以上で5年ごとに登録更新

業務管理者の設置 営業所ごとに義務化

今回、施行された賃貸住宅管理業法における受託管理方式(図1参照)・賃貸住宅管理者の登録に関する条項によって、事業者の登録制度が創設された。管理戸数が200戸以上の事業者については、国土交通大臣への登録と5年ごとの登録更新を義務付けることによって、これまで誰でも行うことができた賃貸住宅の管理業務は、今後、一定の業務水準の確保が求められることとなった。

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図1 管理受託方式(業法の対象となる取引形態)

登録事業者は、国土交通省が指定する講習を受けた賃貸不動産経営管理士をはじめ、2年以上の管理実務経験者などを、管理受託契約や賃貸住宅の維持保全、事業の円滑実施を管理・監督などの業務を担う「業務管理者」として営業所ごとに設置すると共に、委託者に対する管理受託契約の重要事項説明、家賃などの固有財産との分別管理、業務について1年以内の定期報告を義務付けられている。また、管理受託契約書面の交付や契約ごとに金銭を区別した帳簿の作成、標識の表示などの義務や、名義貸し・再委託・業務上の情報漏洩の禁止なども定めている。

現行の有資格者には経過措置で移行講習

同法の登録制度により、賃貸不動産経営管理士とは、賃貸アパート・マンションにおける「賃貸住宅管理業の実務経験や専門知識などを有する専門家」の国家資格の有資格者として登録事業者の「業務管理者」に認定されることとなった。ただし、20年度までに同資格の認定試験に合格し、経過措置期間中に登録を受けた賃貸不動産経営管理士は、経過措置期間が満了する22年6月までに賃貸不動産経営管理士協議会が実施するeラーニング形式の「業務管理者移行講習」を修了することで、国土交通大臣の登録を受けた業務管理者に登録が可能となる。

なお、国家資格となる今年度の「賃貸不動産経営管理士」の試験は、11月21日に全国25地域で開催、22年1月に合格発表を実施する予定だ。

サブリース事業は昨年12月に施行

同法のうち、オーナーが賃貸経営ごと管理事業者に委託する、いわゆるサブリース方式(図2参照)の賃貸借に関する措置については、昨年12月に施行している。

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図2 サブリース方式(業法の対象となる取引形態)

※ 図1、図2の出典は日本賃貸住宅管理協会


建築会社・ハウスメーカーなども含めたサブリース事業者・勧誘者を対象としており、オーナーとサブリース事業者間で締結する特定賃貸借契約(マスターリース契約)の広告条件における誇大広告や、家賃の減額リスクなどオーナーの判断に影響を及ぼす重要な事項を故意に事実を告げなかったり、不実を告げたりするといった不当な勧誘行為を禁止したほか、特定賃貸借契約締結前の重要事項説明と同事項の書面交付、契約締結時の契約書の交付を義務付けている。

具体的には、①オーナーに支払う家賃、②賃貸住宅の維持保全の方法(内容・頻度・実施期間など)、③賃貸住宅の維持保全に必要な費用の分担に関する事項(負担する者およびオーナーとの負担割合)、④マスターリース契約の解除に関する事項(契約期間、更新時期、更新拒絶要件)――について、顕著な事実との相違や実際より著しく優良であるなどの誤認をさせる表示を禁じている。一定の家賃を支払うと約束する旨の表示は、家賃見直しがある場合、その旨や借地借家法に基づき減額するといった明記が必要となった。

これらの条項に違反した場合は、業務停止命令などの行政処分が科されるほか、勧誘の際、故意に事実を告げなかった場合や不実の告知をした場合は、6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金、併科のいずれかを課す罰則を定めている。また、誇大広告や虚偽広告の罰則には30万円以下の罰金が、特定転貸借契約の締結前・締結時に必要事項の記載がない書面を交付した場合や書面を交付しなかった場合などは50万円以下の罰金が科されている。


民法改正

入居者の権利保障 オーナーの責任強く

昨年4月1日に施行した改正民法では、連帯保証人の債務保証の範囲を明示するよう義務化されたほか、故障や修繕に関する要件やオーナーチェンジといった賃貸借契約中に起こり得る事項や、原状回復や敷金返還といった退去に伴う事項が見直された。

不動産の賃貸借に関しては、国土交通省による「原状回復のトラブルをめぐるガイドライン」で定められ、既に商慣習となっているものの、民法上で明文化されたことで、退去時の原状回復や敷金返還、修繕についてのルールがより入居者側の権利が保障されるようになった(図3参照)。

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図3 判例・契約書等の考え方(国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より)

賃貸借契約上では、個人が連帯保証人となる場合の「債務極度額の明記」が義務付けられるようになった。債務の上限額が明記されていない場合は、契約が無効となる。一方、保証会社が債務保証をする場合は、極度額を定める必要はない。その場合、入居者は保証会社の審査を通過し、保証料を納める必要が生じるようになった。

また、改正前の民法では明確化されていなかった、トイレの水漏れやエアコンの故障、排水管の詰まりといった修繕費も、修繕が必要である旨をオーナーに伝えたにもかかわらず相当な期間修繕をしなかった場合や、事態の急迫によってオーナーの対応前に入居者が修繕した場合でも、オーナーに修繕費を請求できるようになった。ただし、雨漏りや水漏れなどに気付いていたにもかかわらずオーナーに通知せず、そのまま被害が大きくなった場合は、入居者が損害賠償責任を負うこととなる。

屋根などの建物の一部の損壊やトイレなどの住宅設備の故障が生じた場合、入居者はオーナーに賃料減額を請求できる旨にとどまっていた文言は、「使用できなくなった部分の割合に応じ、賃料は減額される」と厳格化するなど、設備の故障などにおけるオーナー側の対応責任は強まった。

また、部屋や建物の所有者が変更した、いわゆるオーナーチェンジがあった場合のルールも改正によって明確化され、不動産の所有権移転登記が行われている場合は、登記簿上の所有者が賃料を請求できる旨が明記された。

原状回復も明文化

更に、賃貸借契約の終了後については、原状回復と敷金返還に関するルールが明文化された。これまで国土交通省のガイドラインに準拠していた原状回復に関するルールは、改正民法で明文化された。改正前まで明文化されていなかった部屋を普通に使用していたことによって生じた消耗(通常損耗)や経年劣化についても、通常損耗・経年劣化に該当する事例と、該当しない事例が示された(図4参照)。

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図4 通常損耗・経年劣化の該当例と非該当例(法務省「賃貸借契約に関するルールの見直し」より)

原状回復義務の明確化に伴い、改正前は明示されていなかった敷金の用途についても、家賃滞納があった場合は敷金から差し引く旨が明文化された。これにより、経年劣化による修理代などの名目で入居者に敷金が返還されないといったトラブルを防ぐことが可能になった。

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『住宅新報』2021年6月22日号「賃貸トラブル解決特集」より)

その2へ続く