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不動産投資、海外と日本との違い 各国にはどんな特徴があるのか ~その1~

2021.9.1|業界の知識を深める

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2020年にコロナが全世界へ拡大して以降、2021年半ばの時点では、ワクチンの接種状況など国ごとの対応進捗に差がついてきている。日本国内の先行き不透明感が拭えない中では、あえて海外に目を向けてみるのも1つの考え方と言えるだろう。海外不動産投資と国内不動産投資との違いや、国ごとの特徴について解説する。 (ライター・秦 創平)


国内と比較した海外不動産投資のメリット

日本国内と比較した場合に見えてくる海外不動産投資の大きなメリットは2つある。1つ目はキャピタルゲインの期待を持てることで、2つ目は空室リスクの少ない投資を期待できることだ。人口が増加しているエリアや、経済成長によるインフレが起きているエリアでは、不動産の値上がりによるキャピタルゲインを狙える。

しかし、日本では既に人口減少の局面に入っているため、住宅需要の拡大期待があまり大きくない。国際連合が発表した統計によると、日本における15年~20年の平均人口増加率はマイナス0・2%だ。

また、コロナ以前の19年までさかのぼれば、日本の経済成長率はプラスで推移しているものの、足元ではデフレが長期間続いている。なお、低金利の影響で住宅価格は長期間値上がりを続けているものの、21年5月時点では、東京都心を除いて価格推移が踊り場に入ったエリアも多い。各統計に基づいて考えると、日本国内の不動産投資でキャピタルゲインを狙えるエリアはかなり限定的なのが現状だ。

元気な新興国

その一方で海外に目を向けると、東南アジアの新興国などを中心として、人口増加率および経済成長率も長期間プラスで推移している国が少なくない。例えば、マレーシア・フィリピン・カンボジアなどの国では、15~20年の平均人口増加率は1%を超えている。経済成長率に関しても、IMFが発表している25年の予測GDP成長率は、日本では0・6%とそれほど高くない。その一方で、フィリピン・カンボジア・ベトナムといった新興国では6・5%を超えており、長期間のインフレによるキャピタルゲインを期待できる。なお、先進国に目を向けても、アメリカ・イギリス・オーストラリアなど、移民を受け入れている国では人口が増えている状況だ。オーストラリアは特に、移住先としての人気も高いことから、直近の平均人口増加率が1・3%で新興国と比較しても遜色ない水準と言える。

人口の増加によって住宅需要が拡大しているエリアでは、物件価格の上昇と共に、賃貸需要の拡大も期待できる。日本では、人口増加中のエリアが東京都心または地方都市の都心に限られており、それらのエリアでは物件価格の高さがネックになる。東京都心では特に、2021年5月時点ではバブル期以来の高水準とも言えるほど物件価格が上がっている状況だ。しかし、例えば東南アジアには、首都の都心部でも1000万円前後で物件を買える国が少なくない。

なお、新興国と同様に人口増加中であっても、先進国で投資を検討する場合は、エリア選定に注意が必要だ。先進国ではキャピタルゲインを期待できても、既にもとの物件価格が高いエリアも多い。先進国では物件価格の上昇ペースや上昇幅が緩やかなエリアも多いので、事前のリサーチを入念にする必要がある。

国内と比較した海外不動産投資のリスク

日本国内の不動産投資と比較した場合に海外不動産投資で注意すべきリスクとしては、不動産会社に関するものと為替に関するものなどが挙げられる。

日本では、言語の壁がなく情報収集も容易なことから、海外不動産投資と比較すると不動産会社を見極める難易度はそれほど高くない。たとえ社名を聞いたことがないような不動産会社であっても、webや口コミで情報収集できることが少なくないからだ。

しかし、海外不動産投資の場合は、英語もしくは投資先の国で使われている母国語でしか情報収集ができない。また、不動産会社の実績や口コミを確認しようとしても、どのwebサイトを見ればいいのかわからないといったことが多い。

土地保有の規制

海外不動産投資では、不動産会社の見極めができないと、竣工リスクや空室リスクなど複数のリスクをケアするのが難しくなってしまう。竣工リスクとは、物件の引渡しを受けられずに支払済みの資金も返金されないリスクのことだ。東南アジアの新興国では特に、外国人による土地の保有が規制されているために、集合住宅であるコンドミニアムにしか投資できないことも少なくない。

また、新興国で投資対象となるコンドミニアムは、その大半が「プレビルド」と呼ばれる完成前の物件だ。プロジェクトによっては、物件が売れて買い手から回収した資金をそのまま工事費用に充当していることもある。この場合は、物件の売れ行きが良くないと、工事が途中でストップしてしまう。

海外不動産投資で竣工リスクを軽減するためには、プロジェクトの売行きに関わらず物件を完成させられる体力を持ったディベロッパーから物件を購入することが必要だ。ディベロッパーを見極めるためには、シンプルにこれまで分譲してきた物件の実績を確認するだけでも役に立つことが多い。新興国では特に、投資家にとって極端に有利な保証をつけているディベロッパーも散見される。

投資家にとって極端に有利な条件を提示しているディベロッパーは、実績ある不動産会社との競争力を担保したいと考えている場合もある。そして、発展著しい新興国といえども、高利回りを長期間保証できるかは定かではない。高利回りの保証を謳っている不動産会社については特に、物件購入前にその背景を確認することが重要だ。

更に、海外不動産投資では物件が立地している国の通貨で家賃収入が入ってくることを覚えておく必要がある。入ってきたお金を日本で使う場合は、海外の口座から日本の口座へお金を移さなければならない。外国の通貨は為替が日々変動しており、通貨の価値が下がっている時期に送金すると、日本円へ換算した時に為替差損が発生してしまう。物件を売買する時も為替には要注意だ。円安の時に物件を売買すると、為替差損が発生する可能性が高くなる。物件購入時は決済に合わせて送金するよりも、あらかじめ現地で銀行口座を開設しておき、為替に問題がない時期に資金をストックしておくなど、工夫しておくとリスクを軽減可能だ。

一方で、物件を売却する時にも、売却して入ってきたお金は一旦現地の銀行口座にストックしておき、円安の時期に日本へ送金すると良い。国ごとの為替動向を比較すると、USドルなど先進国の通貨の方が値動きは大きいため、先進国で投資する場合にも要注意だ。


国ごとの特徴①

アメリカ

アメリカ不動産投資の特徴としては、外国人向けの規制が急に新設されるリスクなどが少ないことや、長期的なキャピタルゲインを狙えることなどが挙げられる。

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21年4月時点のアメリカの住宅価格

成熟した市場

アメリカは世界で最も進んでいる先進国の1つであり、外資の流入を拒まない文化を持っている。例えば新興国では、外国人投資家や外国企業が物件を買い漁ることによって、不動産価格が急騰するケースも少なくない。結果的に自国民が不動産を買えなくなることを防ぐため、突然外国人向けの規制が新設されることもある。

規制が新設されると、投資の出口戦略や購入物件の選択肢が限定されることもあり、投資の前に思い描いていた計画の変更を余儀なくされるケースも少なくない。

しかし、アメリカでは不動産市場も成熟しており、外資の受け入れを拒まないことから、突然の計画変更を迫られる心配をしなくてもよい。総じてリスクが少ないのがアメリカ不動産投資のメリットだ。

また、アメリカは古くから移民を受け入れているため、人口増加率が長期的にプラスで推移している。トランプ政権は移民排斥の姿勢を明確にしていたが、バイデン政権はこの姿勢を引き継がない意思を示している。人口増加の傾向は新興国ほど顕著ではないものの、住宅需要の拡大は続いており、アメリカの不動産は長期的な値上がりを継続している状況だ。

その一方で、新興国と比較すると物件価格が高い点には要注意だ。Redfinの統計によると、アメリカでは2021年4月時点の住宅価格が37万ドルを超えており、円換算すると4000万円前後まで値上がりしている。海外不動産投資ではローンを利用しづらく多額の自己資金が必要になる。アメリカは資金的に余裕がある人向けの投資先と言えるだろう。また、物件価格が高くなると利回りは下がるため、アメリカ不動産投資の利回りは新興国と比較すると高くない。

アメリカ不動産投資は、リスクの軽減を念頭に置いた上で、投資効率が多少下がったとしても堅実に投資していきたい人に向いていると言えるだろう。

『住宅新報』2021年6月15日号「資産運用ビジネス特集」より)

その2へ続く