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コロナ禍で市場環境が急変 難局打開へ新たな展開 ~その1~

2021.4.26|業界の知識を深める

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新型コロナウイルスへの感染拡大とその抑止を目的としたステイホームなどの一連の動き(以下、コロナ禍)は、住宅・不動産業界にも大きな影響を与えている。というのも、顧客の「一生に一度の高価な買い物」をサポートする事業だけに、対面を前提とする事業活動に強い制限がかかったことでビジネスチャンスを失いかねない状況になったためだ。事業者はそうした状況においてオンライン(リモート)商談をはじめとする新たな取り組みにチャレンジすることで、コロナ禍の状況を乗り越えるための模索を続けている。一方で、ステイホームや在宅ワークを含む「ニューノーマル(新たな生活様式)」への対応ニーズは、多くの人々に住まいに関する価値観を変える状況を生み出しており、それに伴うビジネスチャンスをも生み出している。そこで、ここでは事業者が急激な市場環境の変化をもたらしたコロナ禍に対しどのような対応をしているかを確認しつつ、これからの展望について考察する。(住生活ジャーナリスト 田中直輝)


受注回復も先行きには不透明感

ここではまず、これまでのコロナ禍による動きを簡単にまとめてみたい。政府による緊急事態宣言の発出前後から、感染拡大抑制の必要から国民全体に外出自粛が広がり、事業者は住宅展示場をはじめとした対面型の営業を極力縮小する必要に迫られた。このため、年間で最も集客が期待できるゴールデンウィーク期間というビジネスチャンスを喪失するというかたちとなった。結果、(このため)事業者の業績は一時大きく落ち込んだ。

例えば、大手ハウスメーカーの中には、これまでの前年同月比と比べ大幅な受注減を余儀なくされた企業もある。ただ、宣言が解除された5月以降は受注状況が改善の傾向にあり、前年同月を上回る受注成績、あるいはモデルハウスでの集客実績をあげたという企業もある。受注の回復については、オンラインを活用した体制を整備し、営業を粘り強く行ったことによる。

また、多くの人々がステイホームと在宅ワークを余儀なくされたこと、それにより賃貸住宅から持ち家に移り住むというニーズが発生したこと、分譲マンションの購入を検討していた人たちが戸建て住宅に切り替えたなどということも、受注回復の要因として指摘されている。まだ、はっきりとした数字としては表れていないようだが、あるハウスメーカー関係者が「郊外の分譲戸建て住宅の販売が好調」などと話していることから、賃貸住宅・分譲マンションから戸建て住宅へ、都市部から郊外へのニーズのシフトはある程度正しく、現在の住宅産業のあり方を示していると考えられそうだ。

いずれにせよ、コロナ禍は多くの人たちにほぼ1日中住まいの中で過ごさなくてはならないという状況を強いた。このことはおそらく、人々が住まいや暮らしのあり方についてかつて無いほど真摯に考える機会を創出し、住まいと暮らしへの関心もまたかつて無いほど高まったといっても過言ではないだろう。つまり今、人々の住生活意識が劇的に変化し、そのために住宅・不動産の市場が大きく潮目を変えようとしている可能性があるということだ。

ところで、内閣府が8月17日に発表した20年4‐6月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値(物価変動の影響を除いた実質)は、前年同期期比7・8%減、年率換算では27・8%減になるとしている。これはリーマンショックを上回る戦後最大の下げ幅だ。このうち住宅投資は同0・2%減で、その他に比べ下げ幅が低いが、これは着工の動きが遅れて反映されるためで、今後発表される速報値では減少幅が拡大する可能性もある。

7月以降、大手ハウスメーカーの受注状況は大幅な改善傾向にあるが、これは緊急事態宣言の影響が濃かった期間中の需要が反映されているだけで、今後については余談を許さない状況だ。元々、消費増税の反動減から、今年度の住宅需要は弱含みだったことも、そのことを裏付ける。

コロナ禍による影響が今後どれくらい継続するか筆者には見当が付かないが、この出来事が住宅・不動産業界の淘汰、再編の大きなキッカケになるとも見られる。