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コロナ影響でEC市場拡大 物流不動産が再加速 ~その2~

2021.8.10|業界の知識を深める

  • 物流不動産
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サプライチェーン構造変化で需要増

新型コロナウイルスの感染防止のため、東京・大阪・兵庫・京都に加え、沖縄でも緊急事態宣言が繰り返され、経済活動の鈍化への懸念、東京五輪開催の混乱、株高と実体経済との乖離と、社会全体の混迷が続いている。ニューノーマルで、大都市部でのEC需要の高まり、サプライチェーン分断による物流再構築、社会に浸透するSDGsの影響により、新たな動きが物流不動産市場に見えてきた。再加速する物流不動産を解説する。

(イーソーコ総合研究所 取締役会長 大谷巌一)

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物流不動産の屋上で太陽光パネル設置

物流不動産の潮目が変わってきたように感じる。国際社会でSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が30年までに達成すべき目標として17の目標、169のターゲット、232の指標から構成された。国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国際的な開発目標として掲げられた。日本を含む各国政府は、SDGsの達成に努め、30年というゴールが設定される中、社会課題解決の取り組みを行う。企業のSDGsへの対応は義務づけられていないが、無視することはできないだろう。

物流不動産ではSDGsの動きから、屋上に太陽光パネルを設置する動きが活発化している。これまでは売電がメインだったが、採算が合わない事業となった。現在の太陽光パネルの供給は、①FIT(ソーラー発電の送配電事業者(東電などへの電気売却)、②PPA(ソーラー発電の自己消費で、小売電気事業者の設置によるソーラーからの電気を、建物の利用者が買電)、③分散型エネルギーシステム(ソーラー発電の小売電気事業者が、送配電事業者に売電と買電を行うと共に、建物の利用者(施設所有者及びテナントなど)にソーラー発電による電気を売電)の3点。日本物流施設の河田榮司社長は、分散型エネルギーシステムに着目する。「利用する企業はトラッキング付き非化石証書の活用もできる」ためだ。非化石証書とは、「太陽光発電や風力発電などで、CO2(二酸化炭素)を排出しない」という環境的な価値を証明するもの。発電場所と種類を特定した証明として利用者が活用できる。

分散型エネルギーシステムで、太陽光パネルを設置した物流不動産の施設所有者やテナントは、電気代を安く利用できることと同時に、非化石証書などにより環境貢献を証明できるようになった。ソーラーの設置費用は小売電気事業者が担うため、施設所有者は場所を提供するだけで初期コストをかけずに、安価な電気と非化石証書を取得できる。河田氏は「SDGsの流れからも太陽光パネル導入が促進される動きは加速していくだろう」と見る。

同事業に参入したオリックスは、太陽光パネルを物流不動産の屋上に設置、発電した電気を施設所有者やテナントに直接販売を行う。物流不動産側では電気を必要な分のみオリックスから購入すれば、脱炭素活動を顧客企業などにアピールできる。売電で再生エネルギーの需要が喚起されれば、リターンの幅が広がり、環境負荷低減へのニーズは急速に高まっていく。そこで巨大な屋上を有する物流不動産が更に注目を集めてくるだろう。

物流以外の例でもスターバックス コーヒー ジャパンは、脱炭素社会の実現に向け、路面直営店の全店舗で100%再生可能エネルギーへの切り替えを進めている。全国の直営の300店舗あまりで既に再エネ化は完了しており、今年10月末をメドに約350店舗に広げるという。


倉庫・物流施設の賃料相場をシリーズ化

さて、今回から読者の皆様に物流不動産の賃料相場に加えて新たに従来の倉庫・物流施設を本紙でご紹介させていただきたい。私が代表理事を務める日本物流不動産評価機構(JALPA)では、第三者による物流不動産と倉庫・物流施設の適正評価、物流不動産セミナー、海外の物流不動産視察団、評価員育成などを行ってきた。不動産証券化やスーパーシティ構想の発案者である片山さつき参議院議員、元復興相の今村雅弘衆議院議員にもご理解をいただき、ご支援をいただくようになった。

近年、物流業以外の方から多数のご要望があり、首都圏、愛知、岐阜、三重、大阪、兵庫、京都、福岡の物流不動産、倉庫・物流施設の賃料を調査した。事務局の日通不動産・塩田研太郎部長は「特に首都圏エリアは賃料が高くなってきた。この流れはこれからも続くだろう」と見る(図表3)。この先も倉庫物流施設の賃料相場をシリーズ化して四半期に一度、本紙で発表するため、倉庫、物流施設や物流不動産の賃貸をお考えの際はぜひご活用いただきたい。

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【図表3】日本不動産評価機構が発表した東京エリアの賃料相場(1坪あたり)


今後の物流マーケット

首都圏

●空室率

首都圏での空室率は0・4%を下回り、過去最低基準の結果となった。特にベイエリアと国道16号線エリアの空室率はほぼ0%であり、外環道沿線や圏央道エリアでも前回の調査(前号)と比べ、空室率は半分以下に低下した。その一因として、大手のEC企業による引き続きの大きな需要と、新たに竣工した物件の約9割が満床で稼働を開始したことが考えられる。また、新型コロナ感染拡大の影響から一部の製品流通量が増加して、短期賃貸のニーズが増え物流企業が増床する事象が発生した。

また、今後半年以内に竣工する物件の延べ床面積のうちテナントが内定している物件は50%を超えており、今後は更に空室率が減少すると見られている。

●賃料水準

首都圏全体の平均募集坪単価は、前回の調査(前号)に引き続き上昇した。4400円から4500円の幅で推移し、各エリアともに前年比40~60円前後の上昇を見せている。本年後半も先進物流施設の新規大量供給が見込まれているが、前述のようにテナントリーシングは順調傾向にあるため、更に上昇していくものと予測される。

近畿圏

●空室率

近畿圏での空室率は、前回の調査(前号)に引き続き安定して低い水準を保っている。内陸部の好立地の開発物件が増加することで、竣工前に満床になる事例が増えていることが一因であると考えられる。

また、今年度の開発予定物件のうち、半数以上はテナントが内定していることもあり、空室率は今後も低い水準で推移していくものと思われる。

●賃料水準 近畿圏の平均坪単価は、ついに4000円台に突入した。内陸部ではニーズに対して空きがほとんどない状況も相まって、募集賃料は増加を続けている。

また、今年度に限らず、数年の間に新規供給が見込まれているため、募集賃料は高水準のまま安定的に推移していくことが予測される。