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模索続く賃貸住宅市場 ニューノーマルに活路 ~その1~

2021.7.7|業界の知識を深める

  • ニューノーマル
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コロナ禍が輪をかけた厳しさ

新型コロナウイルスの感染拡大とそれによる混乱(以下、コロナ禍)は、「ニューノーマル」という、人々にこれまでにない生活様式を強いた。この1年、住宅事業者はそれに対応する提案を生み出してきたが、それは賃貸住宅を含む資産活用の分野でも同様。むしろ後者に居住する人々こそ、コロナ禍の暮らしに対応する提案を求めていたとも言え、事業者たちは積極的な対応を行ってきた。一方で、賃貸住宅市場はそれ以前から厳しい環境にあり、事業者には慎重、かつ大胆な施策が求められたとも指摘できる。そこで、この記事ではこの1年の資産活用分野、中でも賃貸住宅分野における動きを振り返り、今後につながる方向性を見い出していきたい。(住生活ジャーナリスト 田中直輝)


20年度貸家着工は10%弱減

コロナ禍の影響を抜きにして語れない20年度。まず、住宅市場がどのような状況となったのか確認しておきたい。

国土交通省が4月28日に発表した建築着工統計調査報告によると、令和2年度(20年度)の新設住宅着工戸数は、全体で前年度比8・1%減の81万2164戸となっていた。利用関係別では持家(注文住宅)が同7・1%減の26万3097戸、貸家(賃貸住宅)が同9・4%減の30万3018戸、分譲住宅が同7・9%減の23万9141戸(分譲マンションが同3・1%減の10万8188戸、一戸建ては同11・5%減の12万9351戸)となっていた。

このうち、賃貸住宅は4年連続の減少となっていたが、コロナ禍の影響に加え、一昨年10月の消費増税の影響を受けたこと、相続税改正の影響が一段落したことなども影響している。この他、空き家・空室が増大していることについて社会認知度が高まってきたことなども関連していると考えられる。つまり、元々、賃貸住宅市場の地合は良好とは言いがたい状態だったわけである。

では、このような厳しい環境の中で事業者はどのような取り組みを行い、対応をしていたのだろうか。大きくコロナ禍対応と、高付加価値化という2つの差別化があったと見られ、以下で確認していく。


巣ごもり生活を改善 新提案で差別化図る

人々が、コロナ禍で余儀なくされたのがステイホーム(巣ごもり生活)だ。その中では在宅時間、家族で過ごす時間が増えたことで、在宅ワークはもちろん、家事や子育てなどで、それ以前の暮らしに比べて高いストレスを感じることとなった。それは戸建て以上に、共同住宅(賃貸住宅・マンション)の居住者がより強かったものと想像される。というのも、一般論として後者は前者に比べ居住面積が限られ、在宅ワークができる個室や専用スペースの確保などがしづらい傾向にあるからだ。

そこで、住宅事業者は、賃貸住宅についてステイホーム、ニューノーマルな暮らしに対応する暮らしのあり方を独自に調査し、商品に落とし込むという取り組みを展開していた。直近では、セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)が4月、「ハイムメゾン『ステイ&ワークモデル』」を発売している。この商品をもとに、コロナ禍を受けた賃貸住宅のトレンドを確認する。

1つ目は感染リスクの低減。コロナウイルスを含む有害物質の居住スペースへの持ち込みを抑制することを狙いに、玄関周りに手洗い場や外もの収納といった設備、非接触・非対面を可能にする人感センサー照明などのアイテムを採用している。2つ目は快適な在宅ワークの確保だ。具体的に3つのプランを提案しており、家族とコミュニケーションを取りながら働くオープンプラン、家族の気配を感じつつ仕事にも集中できるセミオープンプラン、静かな環境で仕事に集中できる個室型のクローズプランを用意している。