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脱炭素社会実現に向け加速する住宅の省エネ化 ~その4~

2021.6.30|業界の知識を深める

  • 脱炭素化
  • ZEH
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CN宣言きっかけに議論活発化
省エネ法適合義務化など必至な状況

住宅の脱炭素化に関する議論が熱を帯びている。地球温暖化対策について今後、我が国が目指す方向性として、菅首相が昨年10月に発表した「2050年カーボンニュートラル(CN)宣言」がきっかけだが、議論の内容は新築住宅を対象とした省エネ法の適合、太陽光発電の設置の義務化などに及んでおり、いずれにせよ住宅の省エネ化の動きは今後、より本格的なものになることは間違いなさそうだ。そこで、この記事では脱炭素化に関する背景や課題を明らかにし、更に国や事業者の動きを確認する。(住生活ジャーナリスト 田中直輝)

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LCCM賃貸へのチャレンジも

賃貸住宅供給で業界ナンバーワンの大東建託も、脱炭素化への取り組みを強化しようとしている。日本で初めての脱炭素住宅LCCM賃貸集合住宅を開発し、2月から埼玉県草加市にて建設を開始したと発表。LCCMとは、建設時・居住時・廃棄時においてCO2削減に取り組み、更に太陽光発電などによる再生可能エネルギーを創出し、建設から解体までの建物の一生(ライフサイクル)を通じてCO2排出量をマイナスにすることを言う。具体的には、2×4工法・2階建て(6世帯、延床面積348・56㎡)の建物で、32・40㌔㍗の太陽光発電を搭載しているという。

14年から県立広島大学生物資源化学部生命環境学科の小林謙介准教授と、建物の一生を通して発生する環境負荷量を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)の共同研究を実施。研究の蓄積と、様々な省エネ・創エネの工夫の積み重ねにより商品化を実現できたとしている。同社では、17年に静岡県で国内初となる戸建てのZEH基準を満たす賃貸集合住宅を完成させ、それ以降、ZEH賃貸住宅の普及に努めてきたという。積水ハウスや大東建託といった賃貸住宅のリーディングカンパニーが賃貸住宅の脱炭素化を推進し始めていることから、新規供給においては次第に脱炭素化がトレンドになっていくと考えられる。

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LCCM賃貸集合住宅のイメージ


注目される戸建て分譲での取り組み

住宅分野の脱炭素化に当たり課題の一つとなっているのが分譲住宅分野だ。これまで、大手ハウスメーカー系の分譲住宅が先行して取り組みを進めてきたが、パワービルダー系では顕著な実績が見られない状況だった。ただ、直近で改善の端緒となりそうな動きが見られた。4月に発表された「(一社)日本木造分譲住宅協会」の設立である。パワービルダーのオープンハウス、三栄建築設計、ケイアイスター不動産の3社が設立したもので、「国産木材の利用の促進」が第一の設立の狙いのようだ。

しかし、設立趣旨の中で15年に国連で採択されたSDGs(持続的な開発目標)の課題解決が含まれており、供給する住宅の脱炭素化にも当然ながら取り組みを強化するものと見られる。特に、都市部で多く供給されている狭小分譲住宅は、狭小性からZEH達成を満たす太陽光発電の設置が難しいケースが多く、またコストバランスの問題から省エネ性強化も難しい。しかし、住宅の脱炭素化、省エネ強化は時代の要請であり、分譲住宅の有力企業の取り組みの状況は今後、ますます注目されよう。


コロナ禍受け目標上回った環境配慮型改修

最後に、既存住宅の断熱改修について。前述のSIIの資料によると、19年度のZEH改修は214戸にとどまっているが、それ以前に省エネ改修自体の件数が少ないと見た方がいいだろう。居住者が、住まいについて利便性や安全性などと比べ、省エネ性の必要性を強く認知していない状況だからだ。

そんな中、住友林業グループでリフォーム事業を展開する住友林業ホームテックでは、「環境配慮型リフォーム受注率向上」を目標に掲げて事業を推進。20年度は一般物件(住友林業の家のオーナー以外)における耐震工事・構造補強工事・断熱改修工事・スマート商材設置工事の4つの合計受注割合55%を目標とし、結果的に62・2%を達成している。

「コロナ禍の影響により、テレワーク環境の整備をはじめ『我が家時間』を充実させるための快適で安全な住まいづくりのニーズが高まる中、昨今、断続的に発生する地震への対応を踏まえた耐震・構造補強工事を積極的に進めたことにより、目標を上回ることができた。環境配慮型リフォームは、自然災害時の備えにもなり、今後ますますニーズが高まる」としている。