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脱炭素社会実現に向け加速する住宅の省エネ化 ~その2~

2021.6.30|業界の知識を深める

  • 脱炭素化
  • ZEH
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CN宣言きっかけに議論活発化
省エネ法適合義務化など必至な状況

住宅の脱炭素化に関する議論が熱を帯びている。地球温暖化対策について今後、我が国が目指す方向性として、菅首相が昨年10月に発表した「2050年カーボンニュートラル(CN)宣言」がきっかけだが、議論の内容は新築住宅を対象とした省エネ法の適合、太陽光発電の設置の義務化などに及んでおり、いずれにせよ住宅の省エネ化の動きは今後、より本格的なものになることは間違いなさそうだ。そこで、この記事では脱炭素化に関する背景や課題を明らかにし、更に国や事業者の動きを確認する。(住生活ジャーナリスト 田中直輝)

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3割占める無断熱住宅

国土交通省が前出の審議会で用いた資料によると、新築戸建て住宅のうち省エネ基準に適合している住宅は、19年時点で約85%(うちZEH<ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス>レベルは約25%)で、新築共同住宅では19年時点で約72%(うちZEHレベルは約2%)となっているという(図2)。つまり、戸建てでは15%、共同住宅でも約28%が断熱性能が低い可能性があるということだ。

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図2(国土交通省資料より抜粋)

一方、既存住宅(約5千万戸)のうち、省エネ基準に適合している住宅は18年度時点で約11%となっており、無断熱の住宅は約30%となっているとしている。以上のことから、住宅の省エネ化、脱炭素化にはいまだに大きな課題があることが分かる。極端な話、新築される住宅の中には、環境意識が高まっている中でも依然として単板ガラスによるサッシが取り付けられているという現実もある。欧米先進国はおろか、中国や韓国においても省エネ基準が義務化されていることと比較して、我が国の対応は遅いという評価があるが、現在はそうした状況を改善する潮目に来ていることは間違いない。


ZEH本格普及には課題が山積

住宅の脱炭素化、省エネ化の取り組みの中で分かりやすい指標となるのがZEHの普及状況だ。高断熱仕様の建物と高効率設備・家電により省エネを図り、更に太陽光発電など創エネによる再生可能エネルギーで、1年間で消費する1次エネルギー量が正味(ネット)でおおむねゼロ以下になる住宅のことを指す。国はこのZEHについて、20年までに新築注文戸建て住宅の半数以上で、30年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すとしている。

(一社)環境共創イニシアチブ(SII)がまとめた「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業調査発表会2020」の資料によると、19年度のZEH供給戸数(注文戸建て)は約5万7000戸だとしている。そのシェアは、持ち家(注文戸建てを表す)約28万戸の約20%(同年度の全新設住宅着工約88万戸の約6%)に相当するもので、これは20年の「半数」達成にはまだまだほど遠い状況だ。同資料によると、普及が進まない理由について事業者を対象に調査しているが、「顧客の予算」「顧客の理解を引き出すことができなかった」「体制不備」「工期の問題」「太陽光発電が足りなかった」などが上位に挙がっていた。

分譲戸建てでは更に普及が進んでいない。19年度の新設着工は約11万戸だが、そのうちZEHは約1900戸でシェアは2%に満たない。これは分譲住宅が注文戸建てに比べ制約が多いことによる。分譲戸建てでZEHの普及率が高まっていないのは、土地と建物のセット販売であり、そのため顧客の優先事項が価格や立地性(土地)になる傾向が強いためだと考えられる。省エネ性などの建物性能に関して、事業者も顧客も二の次になりやすいのだ。

更に普及が鈍いのが集合住宅(分譲マンションや賃貸住宅)の分野だ。ZEH達成の要件として太陽光発電などの創エネが重要だが、集合住宅の場合、システムの設置容量が限られ、1戸当たりの創エネ量が少なくなるからだ。特に賃貸住宅の場合、ZEH化への投資がオーナーの収益を圧迫する可能性があるためでもある。

脱炭素社会の実現では、既存住宅の省エネ化が最も効果的だが、前出のように省エネ基準に適合している住宅は18年度時点で約11%となっており、無断熱の住宅は約30%という状況で、ZEH化などという状況ではまだない。要するに、ZEHの普及はまだ始まったばかりの状況と言え、国では新築住宅について、それに比較的近い省エネ性能を持つ仕様として、「Nearly ZEH」「ZEH Oriented」といった新たな枠を設け、普及を後押ししている。