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脱炭素社会実現に向け加速する住宅の省エネ化 ~その1~

2021.6.30|業界の知識を深める

  • 脱炭素化
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CN宣言きっかけに議論活発化
省エネ法適合義務化など必至な状況

住宅の脱炭素化に関する議論が熱を帯びている。地球温暖化対策について今後、我が国が目指す方向性として、菅首相が昨年10月に発表した「2050年カーボンニュートラル(CN)宣言」がきっかけだが、議論の内容は新築住宅を対象とした省エネ法の適合、太陽光発電の設置の義務化などに及んでおり、いずれにせよ住宅の省エネ化の動きは今後、より本格的なものになることは間違いなさそうだ。そこで、この記事では脱炭素化に関する背景や課題を明らかにし、更に国や事業者の動きを確認する。(住生活ジャーナリスト 田中直輝)


削減率指標も設定

菅首相の宣言は、「50年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」というものだ。これ以降、同年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定。更に今年4月には米国主催で開催された気候変動に関する首脳会合「気候変動サミット」で、30年の温室効果ガス排出について 46%削減(13年度比)するという目標を発表。これに加えて、5月26日には「改正地球温暖化対策推進法」が成立するなど、国は脱炭素社会実現に向けた動きを加速させている。

こうした中、住宅についての脱炭素化に関する議論が従来より活発化している。「家庭部門」が日本全体のCO2排出量の15・5%を占めており、その削減には住宅の省エネ化、省CO2化が避けて通れないからだ。3月19日に閣議決定された新たな住生活基本計画(全国計画、21年度~30年度)でも、脱炭素化は重要なテーマとされた。基本的な施策は、「50年カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネルギー性能を一層向上しつつ、長寿命でライフサイクルCO2排出量が少ない長期優良住宅ストックやZEHストックを拡充し、ライフサイクルでCO2排出量をマイナスにするLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅の評価と普及を推進すると共に、住宅の省エネルギー基準の義務付けや省エネルギー性能表示に関する規制など更なる規制の強化」することなどだ。そして、成果指標として、「住宅ストックのエネルギー消費量の削減率(13年度比)として、3%(18年度)から18%(30年度)」とすることを挙げている。

さて、住宅の脱炭素化に関する議論が活発化している象徴的な出来事が、小泉進次郎環境相による「住宅・ビルへの太陽光パネル設置義務化」への言及だ。再生可能エネルギーの活用拡大を意図したものと思われるが、これを受け4月、国交省や環境省などが新たな審議会「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を開催。その中で、ハウスメーカーや工務店などの関係団体9団体が太陽光パネル設置の義務化について意見を表明し、多くの団体が「一律義務化は時期尚早」などと意見を表明した。6月までに結論が出されるというが、いずれにせよ住宅の脱炭素化を実現するためには、義務化のような強制力を持たせることが必要であることを、上記の議論が明らかにしている。

住宅の脱炭素化に向けた議論においてもう一つ注目されるのが、建築物省エネ法における規制措置の強化だ。これまでの経緯は(図1)の通りだが、要するに省エネ法の規制措置が段階的に強化されており、これまで住宅は省エネ法の適合義務化を免れていたものの、今後の義務化は必至な状況と見られる。

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図1(図表は国土交通省資料より抜粋)

※大手住宅事業者について、トップランナー基準への適合状況が不十分であるなど、省エネ性能の 向上を相当程度行う必要があると認める場合、国土交通大臣の勧告・命令の対象とする

『住宅新報』2021年6月8日号「新しい生活様式特集」より)

その2へ続く