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変化した住まいのニーズ、次世代に引き継ぐ質の高い住宅 ~その4~

2021.6.16|業界の知識を深める

  • ニューノーマル
  • 脱炭素化
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浮上する2つのキーワード

新型コロナで、住宅に求められるものが変わった。そのキーワードとなるのが、「ニューノーマル対応」と「脱炭素化」だ。在宅勤務が一般化し、通勤の重要性が低下する一方、家で過ごす時間が長くなり、多様な住まい方に人々の関心の重点が移りつつある。一方、自宅での時間が長くなると、光熱費負担の増加を意識するようになった。住宅の一次取得者層は、気候変動への関心も高い世代ということもあり、住まいの省エネ性能への関心も高まっている。住まいに求められる新しい生活様式はどのようなものとなるのだろうか。これら2つのキーワードから紐解いていく。

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寄稿

ポストコロナにふさわしい住宅ストック整備

阿部俊則・住宅生産団体連合会会長

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脱炭素へ大胆な政策を期待

新型コロナウイルスの感染拡大は、観光業界や飲食業界をはじめ様々な分野の経済活動に影響を及ぼし、昨年度の我が国の経済成長率は▲4・6%に落込みました。一昨年の消費税率再引上げによる落込みから回復途上にあった住宅業界も、新型コロナウイルスの感染拡大による国民の住宅取得マインドの冷え込みと感染防止のための営業自粛等により、昨年度の新設住宅着工戸数は前年度比▲8・1%の81・2万戸にまで減少することとなりました。今後はワクチン接種の進展により経済活動の回復が期待されるものの、多様な変異種の出現などもあり、コロナ以前と同等の状況にまで回復するにはまだ相当の期間が必要であると考えられます。

一方、新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークやオンラインによる授業、商談、医療等が普及することとなり、停滞していた働き方改革や社会のDX化に拍車がかかることとなりました。こうした社会の動きが人々の在宅時間を拡大させ、居住地や住宅に対し新たなニーズを生み出しつつあります。民間住宅投資のGDPに占める割合は3%程度と決して大きくはないですが、裾野に擁する様々な産業への生産誘発が期待できます。世界中で人々の移動が制限され、インバウンド等の急速な回復が期待できない状況の中、国民の住宅に対する新たなニーズを的確に捉えて民間住宅投資の拡大を誘導し、ポストコロナ時代にふさわしい住宅ストックの整備を図ることが景気回復につながるものと考えています。

海外に目を転ずると、米国では政策金利の大胆な引下げにより住宅ローン金利が1%程度低下し、豪国では連邦政府が2・5万豪㌦(約190万円)の住宅取得補助を実施することで、コロナ禍にありながら旺盛な民間住宅投資の誘導に成功しています。我が国においても、消費税率再引上げ時に措置された住宅ローン減税特例(控除期間13年間)や住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置を継続した上で、令和2年度第3次補正予算によって最大100万ポイントのグリーン住宅ポイント制度が創設されました。100万ポイントの対象となる東京圏からの地方への移住のための住宅や三世代同居に対応した住宅等を取得する場合には特に魅力的な制度であり、また、ポイントを活用して新たな日常への対応工事等も実施できるものであることから、民間住宅投資の活性化に繋がることが期待されます。

菅内閣は長期的視点に立った大きな政策の柱として「デジタル社会の実現」と「グリーン社会の実現」を掲げられました。前者については社会全体のデジタル化推進の司令塔であるデジタル庁の創設が今年9月予定されており、行政の効率化や住民サービスの迅速化等が急速に進展することが期待されています。住宅産業においても生産性や居住者サービスの一層の向上を目指して、あらゆる分野でデジタル化が進められつつありますが、デジタル化が遅れている分野の一つが役所や検査機関等を相手とする許認可等の手続きであり、デジタル化の進展が大いに期待されるところです。また、デジタル化によって住宅に居ながら享受できるサービスの質と量が飛躍的に拡大することから、住宅産業が事業のウイングを広げながら飛躍する可能性があると思います。

後者については、菅総理が50年カーボンニュートラルの実現を宣言され、昨年12月にグリーン成長戦略が策定されました。この中で住宅産業に関してはLCCMやZEHの普及、省エネ改修の促進、高効率機器や再生可能エネルギーの導入等の取組みを推進することが掲げられています。当連合会ではこれまでもZEHや長期優良住宅の整備等を通じて住宅の省CO2化に積極的に取組んできましたが、この分野での最大の課題は何と言っても多額の工事費を要する既存住宅の省CO2化であり、この課題の克服に向け国による大胆な対策の実施が期待されます。

過日、令和3年度を初年度とする新たな住生活基本計画(全国計画)が閣議決定され、「脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成」等8つの目標が設定されました。住宅循環システムとは良質な住宅をつくって、適切に維持管理し、市場を介して流通させ、幾世代にもわたって活用するシステムであり、このようなシステムを社会に根付かせるためには、住宅税制もそれに相応しいものへと抜本的に見直す必要があります。このような考えの下、当連合会では、最初の住宅取得者に偏重した課税の是正、流通課税の廃止・縮小等を内容とする「住宅税制の抜本的見直しに向けた提言」を昨年7月にとりまとめました。青臭く荒削りな提言ではありますが、国民の支持獲得に向けた取組みや関係国会議員・関係省庁との議論を通じて、現実の住宅税制の中に反映されるよう努力して参りたいと考えています。

『住宅新報』2021年6月8日号「新しい生活様式特集」より)

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